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数学と数学教育
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圏の定義に出てくる「射」と「矢」

 何か新しい概念を学ぶとき、まず定義から始めようと思うのは自然なことだと思うのですが、しかし定義をよんでもなんにもわからないというのも常かと思います。しかし、わからなくても定義抜きでは始められない。というわけで、まずは「圏の定義」について(あえて曖昧に)考えていきたいと思います。

 さて、圏というものは、

   「対象」(object) と 「射」(morphism)

から構成されているもようです。と書くと、おそらくすでに不正確なのでしょうが、まずはそう考えてみます。そしてこの「射」のほうは「矢」(arrow)とも呼ばれているようなのです。どちらかというと「射」のほうが一般的なのかな?という印象を個人的にはもっています。なお、清水義夫著『圏論による論理学―高階論理とトポス』では「矢」が採用されています。

 「矢」というとなんだか名詞的で、「射」というと動詞的ですね。ちなみにarrowはそのまま辞書で「矢、矢印」と載っていますが、morphismは載っていませんでした。実際、「矢」という日本語はあっても「射」という日本語はないし。

 さて、「対象」はともかく、この「射(または矢)」とはいったいなんなのだ。

 圏の定義にそれは書かれてありません。ウィキペディアによると、射とは「2つの数学的構造の間で構造を保存する過程を抽象化したものである」とのこと。これの意味がわかるのは「射」がわかっている人だけでしょうね。でも、こう説明するしかないのだとも思います。また、この抽象性ゆえ、圏というものの適用範囲が広いのかな?と初心者ながら想像しています。なお、清水義夫著『圏論による論理学―高階論理とトポス』に出てくる圏の具体例においては、「射」のほとんどが「写像」になっています。しかし、「写像」でなくてももちろんいいのだと思います。

 さて、いまの私の最終目的は、銀林先生の「量圏」の理解にあるのですが、まずは檜山正幸のキマイラ飼育記はじめての圏論 その第1歩:しりとりの圏で圏に慣れようと思いました。素朴で身近でわかりやすそうで、かわいらしい例なので。

 しかし檜山さんが代表的なものとして示した定義では、「対象」も「射」もモノの“集合”と書かれています。なお、集合に引用符がついていることについてはあとで理由が示されていますが、とりあえず「射」はモノであるようです。ちなみに、清水義夫著『圏論による論理学―高階論理とトポス』における圏の定義では、「対象」にも「射」にもモノという言葉は使われていません。(集合については注意書きあり)

 「射」をモノと考えるのか考えないのかは、第一歩を踏み出す初心者にはけっこう大きな違いだと感じられます。

 というわけで、「射」をどう考えたものか戸惑ってしまうのですが、ここはひとつ檜山さんの示されている定義に即して「射」をモノと考え、「しりとりの圏」を理解することにしました。というのも、「射」を関係として考えているうちは、「ひらがな文字列」を「射」と考えることに抵抗感があるからです。しかし、「射」をモノとして考えると、とたんにわかりやすくなります。つまり、「ひらがな文字列」をそのまま「矢印」とみなせばいいのだと思いました。

(つづく)

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