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「零」はどこからきたか

 高橋誠『和算で数に強くなる!』(ちくま新書)の紹介をしています。ネタバレをかなり含みますので、まっさらな気持ちで本を読みたい方は、まず本を読んでくださいませ!

 さて、古代中国の算木の計算において、計算結果は漢数字で表していたものの、算木の最初の置き方や途中の計算の仕方を紙に書く場合がありました。このとき、算木を置かない空位を示すゼロ記号が必要となり、小円「○」で表していたそうです。また、それよりだいぶ前の8世紀には、空位を表すために「点」を書くことも知られていたようです。なぜ知られていたかについては、インドとの関係性が書かれてあります。

 では、算木数字の「○」ではなく、数を表す漢数字はどうであったかというと、12世紀の書物に1310072を十三萬一千□□七十二と記している例があるそうで、この小さい四角はもともとは脱落した文字を表す記号だったのが、空位を表す記号にも転用されたものだとのこと。

 そして、13世紀の数学の本では、「0」が「零」で示されているそうです。「零」はもともとは「雫(しずく)」と同じ意味であり、算木数字の「○」が物の上に残った丸い雨滴と形が似ているから「零」が使われるようになったという説があるのだとか。(ジョゼフ・ニーダム『中国の科学と文明 第4巻 数学』1991)

 以上のことが、1つ1つ細かく文献をあげて述べられています。

 というわけで、中国の数学書を通して日本にも「零」がやってきたようです。しかし、ここでいうところの「零」は小円「○」とともに、空位を表す「記号としてのゼロ」であり、すべての位が空位のときや、同じ数を引き算したときの答えや、四則計算ができる「数としてのゼロ」ではなかったわけです。

 ちなみに、この本の帯にある「江戸から現代へ算術四○○年の旅」の「四○○」の「○」が、まんまるなのが一目見て印象的なのですが、私は最初の紹介文のときに「四〇〇」という、ちょっと横長の楕円状の〇(漢数字)を使って書いてしまいました。「400」を変換するとそうなるのです。横書きだから「四百」ではしっくりこないし、江戸から現代への算術だから「400」もしっくりこないのだけれど、「四○○」と書くと○が目立って不思議な感じがします。たて書きの本では、西暦を示すときに二○○九年というふうにゼロがまんまるで書かれてあるものですが、もともとが縦書きのゼロなので仕方ないというか、あまり違和感がありません。でも、横書きにするといかにも小円「○」という感じがして、本の内容とリンクしていて面白いです。

 さて、そういえば「空」はどうなったんだろう?という疑問がわいてきますが、中国の場合も日本の場合も、数値0にあたるところに「空」という文字が書かれている文献があるそうです。

 そうして話は、第一章の核心部分(そしておそらくこの本の主要テーマの1つ)にさしかかってきます。ので、ちょっと慎重に、書きすぎないよう、レビューの予定。

(つづく)
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