TETRA'S MATH

数学と数学教育

これからのこと/クレアさんのブログの記事のご紹介

 学習指導要領解説の検討を年が明けるまえに一段落させたかったのですが、まにあいませんでした。今後はブログでその経過を書くことはせずに、個人的に作業を続けていき、折にふれTwitterで思うところをつぶやいて、何かまとめられそうなときにはブログに書いていこうと思います。

 そうすることにしたのは、年をまたぎたくないということもありますが、先日、Twitter経由で、学習指導要領改訂の報道を知ったことが、大きな理由です。

■東京新聞webサイト>
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013122902000097.html

 改訂の焦点としては、小中学校の英語教育と高校の日本史、そして先行実施の道徳(および高校の「公共」)あたりがあげられそうで、逆にいうと算数の内容については蚊帳の外という感じがしないでもありませんが(あるいは、道徳とのつながりが強化されるということはありうる?)、一応全面改訂なので、小学校算数の指導要領の内容も少しは改訂を考えるのでしょうね。それにあわせて教科書も作りなおすのかな?

 算数の時間数は変わらないようなので、内容の大幅な増減はなく、学年を超える単元の移動もないのではなかろうかと勝手に推測しています。ひょっとしてひょっとすると、算数に関しては指導要領の言葉をちょこちょこっと変えて、教科書はそのままということもありうるのだろうか!?…なんてことも考えてしまっていますが、まあいま考えてもしかたがないことなので、文部科学省の発表を待つことにします。

 個人的には、指導要領に何を求められるか、指導要領解説に何を求められるか、各検定教科書に何を求められるか、ということを整理しながら考えていけたらな、と思っています。どこまでできるかわからないし、途中で「やっぱりやめた〜」という可能性もゼロではありません、はい。気持ちが続くまでやってみます。

 なお、指導要領や指導要領解説や検定教科書をちょこっと変えて、教育の何が変わるんだろう?という問いは、この作業の間は不問に付すつもりでいます。私なりにささやかな目的はあるので、それを達成することだけに集中します。

 ちなみに、他ジャンルを含めパブリック・コメントも研究中です。これはたとえ反映されても本当に細かい部分になるようで、どんでん返しできるようなものではなさそうです(まあ、あたりまえのことでしょうが)。校正みたいなもんだとまでは言わないけれど、最終調整のような作業なのでしょう。だから、大きなことは改訂前に伝えないとだめなんだろうな、と感じています。汲んでもらえるかどうかはおいといて。あと、パブリック・コメントは署名運動でもないわけなので、数集めればいいということでもなく、似ていると逆に集約されるのかもしれないな…と推測しています。となると……というふうに、あれこれ画策中です。

 さて、それはひとまずおいといて!

 以前、メールのやりとりをさせていただいたクレアさんからブログの最新記事のURLが届きましたので、ご紹介しますね。

Think AloudCreativity in East and West
http://thinkaloud-mathlessonplans.blogspot.com/2013/12/creativity-in-east-and-west.html

(“manipulatives”という単語がわからなかったので、調べてみて、こういうものらしいと知りました。↓ http://en.wikipedia.org/wiki/Manipulative_(mathematics)  直訳すると「操作物」といったような感じになるのでしょうか? おはじきや数え棒、ブロックなど、「算数セット」に入っているようなものなのかな!?) 

 英語が得意ではない私は、翻訳サイトのお世話になりながらなんとか全文を読み、話の大筋をようやくつかんだところですが、クレアさんの真意がつかめているかどうか不安な部分と、つかめたとして考え込んでいる部分が数箇所あります。

 特に気になっているのは、次の一文です。
I realized I was one of those thousands of Japanese students who was victimized of misinterpretation in "global education".
 もう少し考え込んでみようと思います。

 というわけで、大掃除は完全放棄だしおせち料理も作らないし鏡餅は買いそびれたし(^^;そんなこんなで年末年始をすっかりあきらめている状態なのですが(娘だけは別件でその雰囲気を味わえているかな?)、このブログだけはなんとか節目をつけたいと思い、まとめてみました。

 さて、来年私はどんなことに興味をもち、どんな展開になるのでしょうか!?
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教科書センターに行って感じたことと、とある海外の動画について

 学習指導要領解説を検討している最中ですが、きのう教科書センターで6社の検定教科書をざっとながめて、いくつか思うことがあったので、そのことを書いておきたいと思います。

 これまでおもに娘の通う学校の自治体が採択している学校図書を参考にしながら、あれこれ書いてきたのですが、やはり他の教科書もときどきはのぞかなくちゃいけないなぁ…としみじみ思いました。

 まず、比例の式を「y= きまった数 × x」「y= x × きまった数」という言葉の式ではっきり2通りのせているのは、学校図書だけのようです。東京書籍は、はっきりとは示していませんが、平行四辺形の面積を使った比例関係で、「y=x × 数」の形の式が掲載されていました。他の教科書も、もしかすると教師用指導書のなかで、問題の答えとしてこの形の式が書いてあるのかもしれません。

 それから、東京書籍、啓林館、日本文教出版は、「速さ」の単元が「比例・反比例」の前にあるので、「速さ」を比例の題材として使える、という特徴があると思いました。
〔2014年5月20日追記:学校図書も「比例と反比例」よりもまえに「速さ」の単元があり、比例のなかでも速さの問題が出てきていました。〕

 また、学校図書では、「比例」についていろいろな子どもたちの考え方を示すなかで、ひとりの子どもが二重数直線を示しているのですが(いろいろな考え方のひとつなので、さらっと出てきているだけ)、他の会社では比例・反比例で二重数直線は使っていないようです。

 あと、ざっと見る限り、「4マス関係表」を駆使しているのは学校図書だけのようです。なんとなく、二重数直線の存在感がいちばん大きいのは学校図書なのかな?と感じました。

 一応著者についてもざっと目を通してきたのですが、これまであれこれ調べたり、教えていただいたなかで印象が強くなっている方々のお名前は、どこか1社に集中しているというわけではなく、各社にばらけているようです。

 なお、筑波大学附属小学校の田中博史さんは学校図書の監修者のおひとりなので、それもあって、学校図書の教科書では4マス関係表の存在感が大きいのかもしれません。なお、学習指導要領解説に4マス関係表は示されていません。

 いずれも、短時間でざっと調べてざっとメモしてきたことなので、見落としがある可能性大です。気づいたらそのつど訂正します。とにかく、あたりまえのことながら、教科書によって違いはあるということを確認してきました。

 さて、一方、takehikoMultiplyさんが、興味深い海外の動画と日本の古い資料を紹介してくださっています。きょうはまず動画について。

 「×」から学ぶこと>
 二重数直線〜2012年アメリカ,1980年日本
 http://d.hatena.ne.jp/takehikoMultiply/20131227

 二重数直線が日本だけのものではないことは、二重数直線は、もはや Double Number Line (動画のリンクあり)で書きましたが、あのときの Tad Watanabe さんは、「4つずつりんごがのっているお皿が6皿あるときのりんごの総数」を6×4という式で書いておられたのに対し、上記リンク先の Katie Tatum さんは、同じ問題を解くときに、途中で「×6」と書いておられるのが印象的でした。

 takehikoMultiplyさんが言及されている「単位×割合」のことをひとまずおいといて私が思ったことは、「おお、二重数直線の普及と同時に日本の算数教育方式の式がグローバルスタンダードになるのか!?」なんてことだったのですが、わり算のところで「÷6」のことを、「÷」を書いたあとにその左に「6」を書くことで表現しているので、つまりKatieさんはそういう感覚で式を書く方なのでしょう。

 それにしても。Double Number Lineで検索すると、まあひっかかってくることくること、ウェブも画像も。アメリカで大流行!? あまりにも数が多いので、リンクは控えます〜
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学習指導要領「解説」で、二重数直線はどのように出てくるか。

 小学校学習指導要領解説[算数編](文部科学省著/東洋館出版社/2008年8月)を読んでいます。

 なお、「まえがき」などはありませんが、同じ内容のものを文科省の次のページから読むことができます。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syokaisetsu/

 引用部分のページ数は、前者について「冊子p.○○」、後者について「PDFファイルp.○○」と示します。



 というわけで、学習指導要領解説において、二重数直線がどのように出てくるかを見ていきたいと思います。

 二重数直線というのは、2本の数直線を並べて描いたもので、比例数直線、複線図などとよばれることもあるようです。どれがもっとも一般的な名称かはわからないのですが、とりあえず私は二重数直線とよんでいます。

 かけ算の順序固定にはさほど敏感に反応しなかった私なのですが、この二重数直線と出会ったときに、「算数の教科書が何かへんな方向に動いている」と感じるようになりました。ちなみに出会いは、娘が小学校4年生の頃、「テープ図がわからない」と言ってきて、算数の教科書(学校図書)を見たときです。

 その後、教科書センターで他の会社について確認したり、検索して関連文献をさがしたりするうちに、どうやらこの二重数直線というのは、いまの算数教科書界でメジャー(あるいはスタンダード)であると認識するにいたりました。

 そして、指導要領解説に二重数直線があることも確認できました。しかし、半分納得、半分疑問符の状態です。確かに出てきてはいるので、どの会社もこれを使うことは不思議ではありませんが、解説における二重数直線の存在感よりも、教科書における二重数直線の存在感のほうが大きい気がするのです(そして、会社によって微妙に違いがある)。

 ということから推測するに、二重数直線の使用自体は指導要領解説がスタンダードにしているけれど、教科書会社は解説だけを頼りに二重数直線を使ってはいるわけではないのではないか、ということ。それぞれの会社がそれぞれ編集するわけなので、あたりまえといえばあたりまえですが、それをより詳しく調べたいのだったら、それぞれの会社の教科書を個別に検討する必要がありそうです。

 とりあえず、学習指導要領解説において、二重数直線がどこでどう出てくるかを確認していきます。

 まず、第5学年の「A 数と計算」の小数の乗法にて。
 整数の乗法については,「一つ分の大きさが決まっているときに,その幾つ分かを求める」,「何倍かに当たる大きさを求める」などの場合に用いる。
 (中略)
 例えば,1メートルの長さが80円の布を2メートル買ったときの代金は,80×2という式で表せる。同じように,「1メートルの長さが80円の布を2.5メートル買ったときの代金が何円になるか」という場合,布の長さが2.5倍になっているので,代金も2.5倍になるということから,80×2.5という式で表せる。
 こうしたことから,整数や小数の乗法の意味は,Bを「基準にする大きさ」,Pを「割合」,Aを「割合に当たる大きさ」とするとき,B×P=Aと表せる。
 数直線を用いることによって,乗数Pが1より小さい場合,積は被乗数Bより小さくなることも説明できる。
(冊子p.143〜144/算数(2)PDFファイルp.166)

 この記述の後半右側に、簡単な二重数直線が2つ示されています。1<Pの場合とP<1の場合です。つまり、その場合わけを示すための図なのでしょうが、注目したいのは、これらがどちらも「割合」の二重数直線になっていることです。

 二重数直線の上の線の右端には「(量)」、下の線の右端には「(割合)」と書かれてあり、割合の1に対応するのがBであるとき、割合のPに対応するのがB×Pになることを示した図です。上記リンク先からすぐに見られるので、よろしかったら直接本物を見てみてください。

 私は、「1メートルの長さが80円の布を2.5メートル買ったときの代金」という発想は、「単位量あたりの大きさ」をもとにしていると理解しています。つまり、長さと価格の関係を使ったかけ算です。しかし、それを二重数直線で表すときには、「割合」を使っている。

 これは本来であればシンプルに、「80円の2.5倍は何円ですか」ときけばすむ問題のように感じられます。80×2.5を学習したいのなら、「80mの2.5倍は何mですか」のほうがより適切かもしれません。1メートルをかませることでわかりやすくなっているようにも見えますが、結局、「布の長さが2.5倍になっているので」ということを根拠にしていることから、「倍」を使っていることにかわりはありません。

 なお、異種の二量の割合と同種の二量の割合で二重数直線がどう違ってくるかということについては、「単位量あたりの大きさ」と「割合」の違い (2)で書きました。

 遠山啓らが「1あたり量」を重んじたのは、80円/mという量を、1つの量として認めたからです。これを認めたときに、2.5mは2.5mという長さでいられます。しかし、この布の問題を「割合」の問題としてとらえると、2.5はメートルのつかないただの数になります。つまり、2つの数量の関係を表す小数です。したがって、遠山啓は2/3という分数も、何かを3つにわけた分の2つ分という二量の関係としての数ではなく、2/3m^2などの1つの量として扱おうとしました(と、私は認識しています)。

 ツイッターでメタメタさんからうかがった話によると()、かけ算が「倍」から「1つ分の数」をもとにする計算方式に変わったのは、1980年版の学校図書の教科書が最初であり、その発想は遠山啓からきているようなのです。おそらくその発想自体は、算数の教科書の中で連綿と続いているのしょう。しかし、上記のことからわかるように、指導要領解説においては、問題は「異種の二量の関係」を使っているのに、それを「同種の二量の関係」をもとに解釈して「割合の三用法」につなげる、ということをしています。

 さらに見ていくと、第5学年の〔算数的活動〕のなかでも、小数の計算について二重数直線が出てきます。こちらも割合の線分図になっています。(冊子p.146/算数(2)PDFファイルp.169)

 そしてもうひとつ、第6学年の〔算数的活動〕のなかで、分数の計算について二重数直線が出てきます。しかしこちらの図では、上の数直線が「棒の重さ(kg)」、下の数直線が「棒の長さ(m)」になっていて、「単位量当たりの大きさ」(異種の二量の関係)の図そのものになっているのです。また、棒のような円柱形を模した、もう少し具体的な図も示されています。(冊子p.167/算数(2)PDFファイルp.195)

 という内容を見て、またまたあれこれ妄想してしまった私。まず思ったことは、学習指導要領「解説」の中に出てくる、言葉の式 で書いたように、ここで急に罫囲みが出てくるので、小数のところと分数のところとでは担当執筆者(あるいは作成協力者)が違うのかもしれない、ということ。(だとしても普通は統一すると思うのですが)

 それから、小数の乗法を「(同種の二量の)割合」として示せば、ここで割合の三用法を示せるなぁ…ということ。どう考えても、指導要領解説の「百分率」のなかでこれが出てこなくて、小数の乗法で出てくるというのは不自然だと思うのです。このあたりは、旧指導要領解説と比較すると面白いかもしれないので、どなたかよろしくです〜(^^)/

 さらに、こうすることで、「同種の二量の割合」と「異種の二量の割合」の、どちらにも二重数直線が適用できることが示せるなぁ、とも思いました。あるいは、同種であろうが異種であろうが、割合であれば同じ図で表せるということを積極的に受け入れているとみなすこともできるかもしれません。ちなみに、確か啓林館の教科書では、「単位量あたりの大きさ(異種の二量の割合)」で二重数直線を使っていなかったと記憶しています。なお、学校図書はバリバリに使っています。

 以上は、私の推測というか妄想なのですが、とにもかくにも、指導要領解説に二重数直線が出てきていることはわかりました。

 そして、たとえば教育出版は、このような指導要領(および解説)の内容をもとにして、線分図・数直線の指導の系統を考えたのでしょう。
https://www.kyoiku-shuppan.co.jp/view.rbz?pnp=100&pnp=109&pnp=237&nd=237&ik=1&cd=1934

(つづく)
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「割合」という言葉を手がかりに考える、学習指導要領解説と数教協

 小学校学習指導要領解説[算数編](文部科学省著/東洋館出版社/2008年8月)を読んでいます。

 なお、「まえがき」などはありませんが、同じ内容のものを文科省の次のページから読むことができます。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syokaisetsu/



 そんなこんなで、割合の三用法2つ前のエントリで3公式としていましたが、三用法にかえました)と私が呼んでいるものが、百分率の学習ではなく小数の乗法、除法の意味のなかで出てきていることを知ったとき、私はまたまたある妄想をしてしまいました。

 ちょうどtakehikomさんが、

  わさっき[OoM] 学習指導要領解説を批判的に読む
  http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20131224

において、
もし「割合は履修済み」だったら,「それに対する割合を小数で表すことを経験してきている」ではなく「それに対する割合を小数で表すことを学習してきている」と書かれるはずです.
と書いておられますが、ここでいうところの「経験」が学校の学習のなかでの「経験」ではなく、子どもたちの個人的な「経験」をさしているのだとしたら、そんなことを学習指導要領解説に言われても困る…という感じがします。むしろ、これまでの学習のなかですでに経験している、と考えたほうが自然なのではないでしょうか。

 もし細かい表現にこだわるとしたら、「学習してきている」とは書けなかったのだろう、と私なら解釈します。実際、単元としての「割合」は学習していないのだから。文科省がそこまで考えて書いているかどうかはわかりませんが。

 以前、学習指導要領で「割合」という言葉は「単位量あたりの大きさ」すなわち異種の二つの量の割合にしか使われていなくてびっくりしたという話を書きました。(

 しかし、たとえば娘が使っている学校図書の教科書には第5学年に「割合とグラフ」という単元があり、百分率よりもまえに「割合」を学びます()。それを考えると、学習指導要領で「割合について理解できるようにする」という文言が入っていてもよさそうですが、それはできないのだろうとあらためて思いました(あくまでも私の妄想です)。

 つまり、学習指導要領では「割合」という言葉を算数用語として扱えない。あくまで一般名詞として使わなければいけない。第5学年でいうところの「割合」は、同種の二量の関係をとらえるひとつの方法のことですが、それを「同種の二量の割合」と書くと同語反復になるし、「異種の二つの量の割合」という言い回しが矛盾してしまうことになる。

 そして、この一般名詞としての「割合」は、大きなくくりで考えると、事実上、小学校2年生のときから出てきていると私は思っています。つまり、子どもたちは2年生のときから割合を「経験させられている」あるいは「経験させられようとしている」。ただし、そのことは現場では、ほとんど意識されていないのだろうと思います。

 ということについて考えるために、かつて、既測量を「1」とおくことは困難か?/「倍」としてのかけ算というエントリを書いたのでした。

 数学教育協議会が「1あたり量」にこだわったのは、累加とくらべてかけ算を小数、分数に拡張することが容易であることに加え、それが「異種の二量の割合」すなわち数教協風に言えば「度」につながり、内包量の代表的なものだったからだと私は理解しています。>小島寛之が語る、遠山啓の「量の理論」

 したがって、帰一法に重きをおくことにもなるのでしょう>比例の問題の答えを出すための3つの方法とその意味。ちなみに、かつて数教協は、除法を「度の第一用法」で一本化することまで考えていました()。

 私が不思議なのは、それなのに遠山啓は、比例の導入で水槽を使おうとしたことです(比例定数が「度」にならない)。数教協のこだわりでいけば、比例は中学校方式で定義しなければ意味がないのに、そこは主張されなかった。かくして、こういうことが起こります。>そうなると話は比例の定義・導入に集約されていく

 一方、学習指導要領解説を読んでみると。そうかもしれないとは思っていましたが、やはりこれら2つの「割合」(同種の二量、異種の二量)はほとんど意識されていないようです。そのことが、特に二重数直線でわかります。

 なお、二重数直線というのは2本の数直線を並べて描いたもので、他にも呼び方があるようですが、私は二重数直線と呼んでいます。二重数直線は学習指導要領解説のなかで3回出てきます。うち2回は小数の乗法について、もう1回は分数の乗法について。そのことを、もう少し詳しくみていきたいと思います。

(つづく)
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言及感謝!>わさっき/私が思う、「学び」の姿

わさっき[OoM] 学習指導要領解説を批判的に読む
http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20131224

 ツイッターで直接、会話はしていただけないようなので、ブログを通して(^^)
ご面倒をおかけします.
 いえいえ、takehikomさんに面倒をかけられたのではなく、私のブログを読んでくださる方の不利益を軽減して(あるいは利益をふやして)いただいたことに感謝したかったのです。意見についてはまとまった形で示すほうがいいとしても、リンク先の問題点くらい直接教えてくださればいいのにぃ、そのくらいの信頼関係もつくれていなかったの?と思ったわけなのです。
「この情報とくっつければ新たな展開があるんだけどなあ」
 ということを、みんなで出しあえる、教室がそんな場所になればいいな、と私は思っています。webは教室ではないけれど、そんな学びがネットでできるのかどうか。あれについてはこの人にきいてみよう、これについてはあの人にまかせよう、というふうにして分担して考えながら、自分の学びが深まっていくこと。そして、「わたしの意見=わたしだけの意見=わたしのもの=わたしのアイデンティティ」ではない。それが、「共」のある学びなのではないか…と私は思っています。

鈴木健『なめらかな社会とその敵』を教育関係者に読んでほしいと思う理由
http://math.artet.net/?eid=1422046

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学習指導要領「解説」の中で、割合の三用法はどこに出てくるか。

 小学校学習指導要領解説[算数編](文部科学省著/東洋館出版社/2008年8月)を読んでいます。

 なお、「まえがき」などはありませんが、同じ内容のものを文科省の次のページから読むことができます。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syokaisetsu/

 引用部分のページ数は、前者について「冊子p.○○」、後者について「PDFファイルp.○○」と示します。



 まず前回の補足ですが、「言葉の式」に関して、第4学年の「公式」のところに次のような説明があることを書いていなかったので、追記しておきます。

 第4学年で取り扱う公式とは,一般に公式と呼ばれるものだけに限らず,具体的な問題で立式するときに自然に使っているような一般的な関係を言葉でまとめて式で表したものも指している。公式については,数量を言葉で表しているということの理解と,言葉で表されているものにはいろいろな数が当てはまるということの理解が大切である。
(冊子p.136/算数(2)PDFファイルp.158)

 さて。

 前回の「言葉の式」で、いわゆる割合の三用法が出てきませんでした。「もとにする量」云々のアレです。実は、解説でもちゃんと出てきているのです。言葉で示したあと記号化しているので完全な「言葉の式」ではないのですが、ほとんど「言葉の式」といっていいと思います。

 それはさておきびっくりなのは。第5学年の「割合」で出てきているわけではないのです。その前の、小数の乗法、除法の意味で出てくるのです。

 例えば,1メートルの長さが80円の布を2メートル買ったときの代金は,80×2という式で表せる。同じように,「1メートルの長さが80円の布を2.5メートル買ったときの代金が何円になるか」という場合,布の長さが2.5倍になっているので,代金も2.5倍になるということから,80×2.5という式で表せる。
 こうしたことから,整数や小数の乗法の意味は,Bを「基準にする大きさ」,Pを「割合」,Aを「割合に当たる大きさ」とするとき,B×P=Aと表せる。
(冊子p.143〜144/算数(2)PDFファイルp.166)

 除法の意味としては,乗法の逆として割合を求める場合と,基準にする大きさを求める場合とがある。
 Bを「基準にする大きさ」,Pを「割合」,Aを「割合に当たる大きさ」とすると,次のような二つの場合である。
  P=A÷B
 これは、AはBの何倍であるかを求める考えであり,除法の意味としては,Pが整数の場合には,いわゆる包含除の考えに当たる。例えば,「9メートルの赤いリボンは,1.8メートルの青いリボンの何倍になるか」という場合である。式は,9÷1.8となる。
 ◆B=A÷P
 これは,基準にする大きさを求める考えであり,除法の意味としては,Pが整数の場合には,いわゆる等分除の考えに当たる。例えば,「2.5メートルで200円の布は,1メートルではいくらになるか」という場合である。式は,200÷2.5となる。
(冊子p.144/算数(2)PDFファイル)

 では、百分率のところではどう書いてあるかというと、
 資料を数量的に考察する場合には,数量の大きさの間の関係を差でとらえる場合と割合でとらえる場合がある。資料の全体と部分,部分と部分の関係を考察する場合には,割合を用いて表す場合が多い。
 第4学年までに,基準にする大きさを1として,それに対する割合を小数で表すことを経験してきている。第5学年では,百分率について理解し用いることができるようにすることをねらいとしている。
 割合をなるべく整数で表すために,基準とする量の大きさを100として,それに対する割合で表す方法が,百分率(パーセント)である。したがって,割合を整数で表すと分かりやすいというよさに気付くようにすることが大切である。
(冊子p.162〜163/算数PDFファイルp.189)

というふうに、文章で説明しています。つまり、第4学年で割合は履修済み的な発想になっています。

 実際にそうなっているとは思っていたのですが、解説に明文化してあるじゃないか!と、驚きました。これだと、割合はわり算が先とはいえなくなりますね。

 ちなみに、小数の乗法・除法の意味では、二重数直線もしっかり出てきます。

(つづく)
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学習指導要領「解説」の中に出てくる、言葉の式

 小学校学習指導要領解説[算数編](文部科学省著/東洋館出版社/2008年8月)を読んでいます。

 なお、「まえがき」などはありませんが、同じ内容のものを文科省の次のページから読むことができます。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syokaisetsu/

 引用部分のページ数は、前者について「冊子p.○○」、後者について「PDFファイルp.○○」と示します。



 これまで、学習指導要領解説において、式による表現がどのように捉えられているかということを見てきましたが、今度は、実際に指導要領解説のなかで「言葉の式」がどのようにあらわれてくるかを見ていきたいと思います。

 まずは、算数の全体的なことについて述べた第2章から。ここでは「言葉の式」という言葉そのものが出てきます。
 式には,2+3,□×5,x−5などのような式と,2+3=5,□×3=12,a×b=b×a などのような等号を含む式がある。また,(単価)×(個数)=(代金)のような「言葉の式」もある。
(冊子p.51/算数(1)PDFファイルp.58)

 次に出てくるのは、意外にも、第3学年の内容においてです。しかも、意外な形で。
 ものの重さを測る場合には,そのものを直接測ることができないので容器などに入れて測る場合がある。この場合には,「(正味の重さ)=(全体の重さ)−(容器の重さ)」という関係が用いられることになる。
(冊子p.104/算数(2)PDFファイルp.121)

 この式は教科書ではほとんど出てこないのではないでしょうか。公式の意味合いがないので。逆に、かけ算を「言葉の式」で表しているところがないのが、意外でした。きのうのエントリで示したように、かけ算の意味については、文章で説明しています。

 次に出てくるのは、第4学年の除法に関する式。この式は指導要領本文にも出てきます。
 第4学年では,被除数,除数,商,余りの間の関係を調べ,次のような式の形に表すことを指導する。
  (被除数)=(除数)×(商)+(余り)
(冊子p.119/算数(2)PDFファイルp.138)

 なお、(被除数)=(商)×(除数)+(余り)という式を並べて書くことはしていません。

[関連エントリ]「わられる数=わる数×商+あまり」でも、教科書にぬかりはなかった。

 そうしていよいよ(?)、第4学年の長方形の面積の公式です(指数表現は「^」の記号で示します)。
このとき縦や横の長さを,1cmを単位として測っておけば,その数値について(縦)×(横)(もしくは(横)×(縦))の計算をした結果が,1cm^2を単位とした大きさとして表されることになる。このことより,
  (長方形の面積)=(縦)×(横)(もしくは(横)×(縦))
という公式が導かれる。
(冊子p.126/算数(2)PDFファイルp147)

 (縦)×(横)だけではなく、(横)×(縦)が加わったことには経緯があるらしいのですが(後日、確認します)、ここで2種類の式を記載したということは、裏を返せば、そのほかの式は1種類か示されていないから、それが正しい順序という解釈にもつながりかねない、ということは言えるかと思います。

 そしてこの(長方形の面積)=(横)×(縦)の形の式は、学校図書の教科書において、小学校6年生の反比例のところでそのまま使われています。指導要領解説が保証してくれているのだから、心置きなく堂々と使えますね。

 これはあくまでも私の推測ですが、横の長さをxcm、縦の長さをycmとして、面積を12cm^2にすると、(横)×(縦)=(面積)から x × y =12 という反比例の式がつくれて、方眼紙にグラフをかいたときにx軸が横、y軸が縦となることにきれいに対応するから、そうしているのではないかな…などと考えてしまいました。

 小耳にはさんだ話では、長方形の面積の公式が(縦)×(横)で固定されることはよくない(公式として順序が固定されてしまう)という発想から加わったときいているのですが、実はこんな裏事情があったりして…などと、つい勘ぐってしまいます。(^^;

 ちなみに、第5学年の直方体の体積の式は、次のように示されています。
したがって,長方形の面積を求めた場合からの類推によって,縦,横,高さを測ることによって,計算で体積を求めることができることを理解し,(直方体の体積)=(縦)×(横)×(高さ)という公式を導くことになる。
(冊子p.152/算数(2)PDFファイルp.177)

 さすがにここで6種類の式を書くことはしなかったようです。

 最後の第6学年では、なぜか(  )ではなく罫囲みでかけ算の式が出てきます。ブログで罫囲みはできないので[  ]で示します。分数表記は「記号/」を使います。
 例えば,「1mの重さが3/4kgの棒があります。この棒2/3mの重さは何kgでしょうか。」の問題においては,「3/4kgを1とみたとき2/3に当たる重さ」と言葉で表したり,[1mの重さ]×[棒の長さ]=[棒の重さ]の言葉の式に当てはめたり,数直線に表したりして,3/4 × 2/3 ととらえられるようにする。
(冊子p.167/算数(2)PDFファイルp.195)

 いまは深く突っ込みませんが、ここを読んで、あの論文を批判したことを、半分、あやまらなくちゃいけないな、と感じました。指導要領解説が、「1とみる」と「1mあたり」を区別していないのですね。

 あとは、円の面積や角柱・円柱の体積の公式を表す「言葉の式」が出てきて、速さの公式「(速さ)=(長さ)÷(時間)」が出てきます。

 ほんでもって、「言葉の式」ではないのですが、比例の式についてどう書いてあるかも見ておくと、
 比例の関係を表す式は,(ウ)の商を k とすると,y = k × xという形で表される。
(冊子p.177/算数(2)PDFファイルp.207)

と書いてあります。

 なお、(ウ)の商については、
(ウ)二つの数量の対応している値の商に着目すると,それがどこも一定になっているということ。
(同上)

と説明してあります。

 私はこの比例の記述を読んで、ちょっと安心しました。安心すると同時に、あの教科書のページに対する疑問が一層ふくらみました。少なくとも指導要領解説は、比例の式として「y=x×k」は示していないからです。

 それもそのはずで、正三角形の1辺をxcm、まわりの長さをycmとしたとき、比例定数を3とする y=3x という比例の式ができることはできるけれど、この「3」は二量の関係としての商というよりも、xからyを出す根拠としての3であり、話が転倒している印象が否めません。

 たとえば、そのあとの〔算数的活動〕において、比例の関係を用いて問題を解決することの例として、「たくさんの紙の枚数を調べる場面」「巻いてある針金の長さを調べる場面」などの例が出されていますが、三角形のまわりの長さは比例関係を使わなくても、1辺が10cmなら30cmというふうに単体で考えればすむ話です。

 いずれにせよ、比例の式をわざわざ「y= きまった数 × x」と「y=x × きまった数」の2種類示して、第6学年にまでかけ算の順序をひっぱっている責任は、指導要領解説ではなく、教科書会社にあると私は思いました(他の会社の教科書についてはまだ確認していません)。

 だから、なんでもかんでも指導要領解説のせい、ということではなさそうです。

(つづく)
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学習指導要領の解説に、かけ算の順序固定の発想は含まれているかもしれない(そう解釈できる余地がある)ことについて

 小学校学習指導要領解説[算数編](文部科学省著/東洋館出版社/2008年8月)を読んでいます。

 なお、「まえがき」などはありませんが、同じ内容のものを文科省の次のページから読むことができます。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syokaisetsu/

 引用部分のページ数は、前者について「冊子p.○○」、後者について「PDFファイルp.○○」と示します。



 1つ前のエントリで、3年生の内容になると、かけ算の順序固定の発想につながりそうな記述が出てくると書きました。今回はそのことについて見ていきます。

 まず、ぼんやりした形で現れている説明から。「乗法の計算が確実にでき,用いること」のなかの記述です。
 「内容の取り扱い」の(4)では,「乗数又は被乗数が0の場合の計算についても取り扱うものとする」と示している。例えば,的当てで得点を競うゲームなどで,0点のところに3回入れば,0×3と表すことができる。3点のところに一度も入らなければ,3×0と表すことができる。
(冊子p.93/算数(2)PDFファイルp.107)

 もし、この記述の直前に、「(点数)×(回数)と表すとしたら」という文言が入っていたら、むしろ順序固定を否定する方向になりますが、そういう注意書きはないので、「(点数)×(回数)」という順序をあたりまえのこととして語っているように読めます。

 さらに、除法の説明においては、順序固定の意味あいがより強くあらわれていると感じる部分がありました。除法が用いられる具体的な場合は大別すると2つあるとして、包含除と等分除を示したあと、項目をあらためて「除法と乗法,減法の関係」のなかで、次のような説明があるのです。
 除法は,乗法の逆算ともみられる。そこで,乗法と関連させて,被乗数,乗数のいずれを求める場合に当たっているかを明確にすることも大切である。包含除は3×□=12の□を求める場合であり,等分除は,□×3=12の□を求める場合である。また,実際に分ける場合でも,包含除も等分除と同じ仕方で分けることができることなどにも着目できるようにしていくことが大切である。そのようにして,どちらも同じ式で表すことができることが分かるようにする。
(冊子p.96/算数(2)PDFファイルp.110)

 この説明は、かけ算には順序があることを前提としている、と解釈してもいいのではないでしょうか。言葉ではなく、わざわざ式を使って包含除と等分除を説明しているので。もし、文部科学省にそのつもりがなかったとしても、教科書会社や教師がそう読み取る可能性は十分にあるように感じました。

 なお、包含除と等分除については、この少し前で、「ある数量がもう一方の数量の幾つ分であるかを求める」場合が包含除、「ある数量を等分したときにできる一つ分の大きさを求める」場合が等分除と説明しています。「1あたり量×いくつ分」と「倍」の発想を微妙にミックスしてあるのが私にとっては印象的でした。考えようによっては、「倍」の発想により近い、とみなすこともできそうです。

 ちなみに、第3学年の〔D数量関係〕のところで、15÷3の式から、「みかんが15個あります。3個ずつ分けると何人に分けられますか。」というような問題場面を見いだすことができるという例が示してあり、「みかんが15個あります。3人で分けると1人何個ずつになりますか。」という例は出されていないので、こういうときに出される例はあくまでも一例だ、ということは言えそうです。

(つづく)
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言及&補填する余裕がないので、栞がわりに「わさっき」からリンクのみ

http://d.hatena.ne.jp/ takehikom/20131218/1387316694#seemore

 とりあえず、著者名・出版社名、消しときました。

 ちなみに私が手にしているのは平成20年8月版で、Amazonで購入しました。興味をもった方がすぐ中身を読めるようにと文部科学省の入り口のページを示しましたが、ページ数も対応していないので、ちょっと考えないといけないですね〜〜。

 ということに気づかせていただいてよかったです。ありがとうございました!

〔追記〕 学習指導要領解説について、冊子のAmazonの該当ページにリンクを貼り、文部科学省内のページのリンク先も示すことにしました。ページ数もそれぞれ示すことにしました。
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低学年で、「式の読み取り」にこだわる難しさ

 小学校学習指導要領解説[算数編](文部科学省著/東洋館出版社/2008年8月)を読んでいます。

 なお、「まえがき」などはありませんが、同じ内容のものを文科省の次のページから読むことができます。 ■http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syokaisetsu/

 引用部分のページ数は、前者について「冊子p.○○」、後者について「PDFファイルp.○○」と示します。



 もう少し、式表現のことについて考えていきます。

 学習指導要領解説では、学年を通しての「D数量関係」について述べたなかで、次のように説明している部分があります。
 
 このような式について,第1学年では,加法及び減法が用いられる場面を式に表したり式を読み取ったりすることを指導する。例えば,「3人で遊んでいるところに4人来ました。」という場面を,3+4の式に表すなどの指導をしている。しかし,こうした式は計算をしてすぐに一つの数になってしまうことから,3+4という式が具体的な事柄を表しているという見方がしにくいことがある。結果を求めることだけに終わるのではなく,式の表す意味に注目できるような配慮が必要である。
(冊子p.51/算数(1)PDFファイルp.58〜59)

 上記のような解説が、「3人で遊んでいるところに4人来たことを具体的に表す式は 3+4 なのか 4+3 なのか」という発想につながって、教育現場に妙な問題や考え方が登場しているのだとしたら、それも無理のないことではないでしょうか。

 一方、第1学年の〔算数的活動〕の解説には、次のような記述があります。
また,8−3=5の式から,「砂場で8人の子どもが遊んでいます。3人の子どもが帰りました。子どもは5人になりました。」というようなお話をつくることができる。さらに,6−3+7の式からは,「りすが6ぴきいます。3びき帰りました。そこへ7ひき遊びに来ました。りすは全部で何びきになりましたか。」などの問題をつくり,絵を用いて表すこともできる。
 このような指導により,式についての理解を深め,式と具体的な場面とを結び付ける活動を高めていくことは,以降の学年における四則計算についても同様である。
(冊子p.67/算数(2)PDFファイルp.77)

 こちらのほうは、式と具体的な場面とを結びつける作業の例として、「8−3=5の式からお話を作る」ことが示されていると私は理解しました。そして、8−3=5からは他にもいろいろなお話がつくれることがポイントだと思うのです。つまり、先に式ありきなので、1つの式に1つの場面は対応しないはずであり、そこにこそ意味があります。8−3=5という式で表現できる場面がたくさんあるということが、減法の理解につながる、と。

 また、たとえ先に場面を設定したうえで式の意味を読み取らせる問題であっても、「姉は色紙を10枚、妹は6枚もっているときに、10+6は何を表しているか、10−6は何を表しているか」という問いであれば、問われているのは「式がどのような場面に具体的に対応しているか」ということよりも、「演算の意味」だと思うのです(この場合は、加法と減法の意味)。

 同じ発想の問題は、中学校の文字式でも出てきます。長方形の縦の長さをxcm、横の長さをycmとしたとき、xy は何を表しているか、2(x+y) は何を表しているか、というふうに。

 式表現に重きをおくならば、「答えを出せばいいというわけではなく、どのように考えたのかそのプロセスが大事」という意味において、また、3+4 と 4+3 の違いといった視点ではなく、加法・減法・乗法・除法といった大きなくくりでの演算の違い、あるいは何段階かの計算を経て答えを導くときのプロセスに注目させるという意味において、そうするべきではないだろうか、と私は考えています。

 しかし、低学年で、整数のたし算やひき算を学習したばかりのころ、あるいは、整数のかけ算を学習して、九九を覚えてかけ算の答えが出せるようになった時期に出てくる式は、2つの数値と1つの演算記号によるシンプルな式1つです。

 そんな段階で「式の読み取り」を重視しろといわれたら、「出てくる数値の順序」にこだわるくらいのことしかできないのではないでしょうか。

 さらに面白いのは、第2学年の「D数量関係」では、次のような説明があることです。
 三つの数量A,B,Cについて,例えば,次の図のような関係にあるとき,AとBが分かってCを求める場合が加法で,A+B=CやB+A=Cとなる。
(冊子p.83/算数(2)PDFファイルp.96)

 「次の図」とは加法・減法のテープ図で、左側がA(男の子の人数)、右側がB(女の子の人数)になっていて、全体をくくってC(全体の人数)と示したものです。

 加法と減法の相互関係について語っているところなので、C−A=B、C−B=Aという式も出てくるのですが、こういうところでは、わざわざ A+B=C と B+A=C の2つを書くんだなぁ、と思うことでありました。これが学年あるいは項目による違いなのか、執筆者(作成協力者)による違いなのかはわかりません。

 そして、「乗法の式」については、第2学年で次のような説明があります。
 式を読み取る指導に際しては,例えば,3×4の式から,「プリンが3個ずつ入ったパックが4パックあります。プリンは全部で幾つありますか。」というような問題をつくることができる。
(冊子p.85/算数(2)PDFファイルp.99)

 例として1つだけ示されたものであり、「プリンが4個ずつ入ったパックが3パックあります」という問題も作れます、とは書いてありません。もちろん、こんな問題は作れません、とも書いてありません。この記述そのものは、かけ算の順序を固定する発想に直接つながるものではないと私は思いました。

 しかし、3年生の内容になると、かけ算の順序固定の発想につながりそうな記述が出てきます。

(つづく)
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