TETRA'S MATH

数学と数学教育

ガロア理論のどこまで納得していて、何に煮詰まっていて、これからどうしたいのか(2)

 結城浩『数学ガール/ガロア理論』をメインの参考文献にしながら、webページや遠山啓『代数的構造』なども参考にして、ガロア理論のおおまかなところを理解しようとしてきました。その作業をするうちに、だんだんと膨らんでくる「気になりごと」がありました。

 それは、ガロアは群や体などの数学の概念が確立されていなかで、ガロア理論をつくっていったということ。そのことと自分は、どうつきあっていきたいのかということ。

 たとえば、『数学ガール/ガロア理論』のp.381では、線型空間を使ってガロア理論を再整理したアルティンの名を、ミルカさんがちょっとだけ出しています。また、あとがきでは結城さんがこう書いておられます↓
 本書の執筆で最も悩んだのは第10章の構成でした。ミルカさんにガロアの第一論文を紹介するようにお願いしたところ、彼女は、ガロアが第一論文で省略したものをすべて補った証明に取り組み始めてしまいました。しかし、そこまで踏み込むと分量は増え、難易度も跳ね上がってしまいます。そのため、第一論文の主張に絞って話すよう彼女に再度お願いしました。
(p.437)

 第10章に入ろうとしたとき、結果的に、本編には書かれてない概念をいくつか勉強することとなりました(交代群など)。本編にないということはこれらの名前を知らなくてもガロアの第1論文は理解できる、ということです。だけど、煮詰まってもいたし、この機会に勉強しちゃえ〜という感じで扱いました。同じノリで、これを機会についでに勉強できる数学の概念が、もっともっとあることでしょう。

 さらに、もし私が「5次方程式には解の公式が存在しない」ことそのものを納得したいのであれば、他の参考書を並列して読むのも有効だし、必要なのだと思います。それこそアルティンが再整理した内容に触れるのもよいかもしれない。

 だけど、私はそれを望んでいるのだろうか…?

 目的としては、最初からドゥルーズ『差異と反復』の第四章を前より深く読むための準備という意識がありました。いまでもそれは忘れていません。しかし、『差異と反復』も終着点=目標ではなく、ひとつの手段です。

 自分のなかに「こういうことが考えたい」という希望がおぼろげにあって、それと同時に、予期せぬ出会いも楽しみにしていて、結果的に「そうなのよ!実はそれが考えたかったのよ!」というところまで、何かが運んでくれるのを待ちつつ、耳を澄ませているのですが、ちょっと声がきこえなくなっていたきょうこのごろ。

 そんななか、『数学ガール/ガロア理論』の巻末にある「参考文献と読書案内」のページをめくっていたら、ある1冊の本に目がとまりました。

  倉田令二朗『ガロアを読む-----第1論文研究』
   (日本評論社/1987年)

 紹介文のなかの次の一文にはっとしたから。
また、ラグランジュのガロアに対する影響について、大きく異なる二説を取り上げて論じています。
(p.447)

 理解できるかどうかわからなかったけれど、Amazonのレビューも背中をおしてくれて、注文。

 著者が倉田令二朗さんだということの意味も、自分にとって大きかったような気がします。このブログでは、遠山啓著作集の解説者としてお名前を出させていただいたことがあります→倉田令二朗が、「遠山啓の現代数学観は反圏論的」という、その意味

 思えば私がガロア理論に取り組むことになったのは、Twitter上での森田真生さんと丸山善宏さんとのやりとりを読んだのがそもそものきっかけでした。ガロアとはとりあえずなんの関係もないことで。森田真生さんがある目的のために作った圏論のテキストを公開されていて、それに対して丸山さんが意見を出されていて、なんだか不穏な空気だったので(^^;興味をもったのです。

 で、ウォッチャーしていたら、丸山さんのツイートのなかに、次のような林晋さんの論文のリンクがあって…↓
https://twitter.com/ym_duality/status/378322800244580352

 リンク先の論文のなかに「滝」という言葉を見つけたことが、ラグランジュ・リゾルベントに取り組むきっかけになったのでした。

 丸山さんの上記の発言は、まさにソーカル&ブリクモンがドゥルーズに対して(も)言ったこと()に通じる話でしょう。しかし、そのような論争についていま考えたいわけではありません。

 そうではなくて、遠山啓の論に取り組んでいるはずの自分が、肝心の19世紀についてまったく考えてこなかった、知ろうとしなかったことに気づき、大いに反省したわけなのです。『数学つれづれ草』の解説でちゃんと安藤洋美さんが教えてくださっていたのに…↓

  近代の「関数」から、現代の「群」へ

 ガロアは、群論の扉を開くためにガロア理論を構築したのではないでしょう。ガロアには具体的に解決したい問題があった。その問題を解くうえで、結果的に群論の扉をあけることになった。でも、たとえ群や体は確立されていなくても、ガロアは数学の概念がなにひとつない状態でガロア理論を構築したわけではない。それまでに確立されていた概念はたくさんあるし、先駆者はたくさんいる。そして、身近にはリシャールという最高の教師がいたし、ラグランジュの研究があった。そのつながりを私は知りたいのかもしれない。人の営みとしての数学に触れたい。

 というところまでは、本が到着する前に書きました。で、いま手元に倉田令二朗さんの『ガロアを読む---第1論文研究』があります。1ページめからすでにびっくりなのですが(「多項式」というセクションタイトルで、ニュートン-ライプニッツ以来の果てしない困難を回避するところから話が始まるその雰囲気にちょっとびっくりした)、私にとってはやはり、最後の最後のページ(p.214)が印象的でした。1987年に倉田令二朗さんがいうところの、古典研究の困難と、2つの断絶。
 さらにわが国での数学状況,エートスはさまざまな古典との断絶がある.たとえばブルバキズムでは過去の数学は原則として現代数学に包摂されるという判断があり,この見地から書かれる教科書が多い.たとえばガロアの理論はそれがもともと方程式論であったことすら理解不可能であるようなやり方で体の一般論の基本定理の一つとしてえがかれる.
 第二の断絶は高校数学と18,19世紀の数学ないしは現代数学との断絶である.

 そして最後の2行はこうなっています↓
 
 なお「古典」という場合,私はゲーデル,コーエン(そして故あって)グロタンディエクもふくめている.
 さらに、序論の「謝辞」に、またまた亀井哲治郎さん(当時、『数学セミナー』の編集長)のお名前を発見。

 倉田令二朗さんのこの本に関しては、ブログに書きながら勉強するという形はとらず、ブログ上ではいったん蓋をしたいと思います。

 そして亀井哲治郎さんのあの文章について、ようやく書く段になりました。(

(つづく)
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ガロア理論のどこまで納得していて、何に煮詰まっていて、これからどうしたいのか(1)

 結城浩『数学ガール/ガロア理論』を参考書にしながら、ドゥルーズ『差異と反復』第四章のごく一部を読むための準備をしてきましたが、どうも袋小路にはまってしまったようなので、ここらでいったん整理してみることにしました。

 結局、ガロア理論については何も書いていないに等しい状態であるものの、その骨子はなんとなくつかめてきました。方程式を解くときには、冪根を添加していかねばならず、冪根を添加すると体は拡大する。一方で、解の置換についての群を考えると、体が拡大するのと対応して群が縮小していく。その群の縮小は、正規部分群の連鎖になっていて、最終的には単位元だけの群にまでいきつく。いきつけたときに、方程式が解けるということになる。

 体の拡大と群の縮小の対応は、とある数値からみてもきれいに対応している。すなわち、2乗根を添加して体を拡大すると、そのときに正規部分群がつくる剰余群の要素の数は2になる。3乗根をとれば、剰余群の要素の数は3になる。

 3次方程式を例にとると、最初の段階でL^3とR^3を求めるために2次方程式をつくったときに、2乗根を添加していて、そのときに6つの解の置換は、[123][231][312]と[213][321][132]の2つに分けられる。言い方を変えると、L^3を求めることで[123][231][312]にしぼられる。そして、Lを求めるために3乗根をとったときに、[123][231][312]は、[123]にしぼられる。

 このとき登場する数値は、すべて「素数」になっています(というか、2と3だけですが)。ガロアは第一論文で、添加する冪根はp乗根(pは素数)だけを考えればいいとしたらしいのです。たとえば6乗根を添加したかったら、2乗根と3乗根を順番に添加すればいいので。6√○=3√(2√○)だから。

 先に見たように、2乗根を1つ添加すると、群は2個の剰余類に分割されました。3乗根を1つ添加すれば、3個に。つまり、p乗根を添加すると、剰余類はp個に分割されることになります。pは素数なのだから、縮小した群がつくる剰余群の要素数も素数になっているはず。このあたりのことは、感覚的にもわかります。2乗根をとるまえに2つのものがいっしょくたになっていたと考えると、2乗根をとればそれは2つに分かれるだろうし、3乗根ならば3つだろうし。

 そして4次方程式の場合は、2乗根→3乗根→2乗根→2乗根と添加していくことになり、正規部分群の連鎖で、剰余群の要素数は、24個→12個→4個→2個→1個と数が減っていくのです。この連鎖が、正規部分群の連鎖で示した、S4→A4→H4→C2→E4に対応します。

 5次以上になると、このように、正規部分群の連鎖が作れません。5次方程式の場合は解の置換は120通りで、最初の正規部分群は60通りあるのだけれど、このあと剰余群の要素数が素数になるような正規部分群が作れないということらしいのです。そもそも、自分自身と単位群のほかに正規部分群がない(ということについての証明が、遠山啓『代数的構造』に載っています)。

 プラスアルファの話として、正規部分群の連鎖であらわれる剰余群たちは、みんな巡回群になっているのだと思います。すなわち、ある1つの操作を繰り返すことですべての要素をつくれるような形。A4の場合は、これに[2134]を反応させるとS4に入っていてA4に入っていない要素をつくれるし、もう1度反応させるともとにもどります。また、H4に[1342]を繰り返すとA4のすべての要素をつくれます。

 ほんでもって、何に行き詰まっているかというと、まずは、ガロアの添加元(↓)の意味が理解できずにいます。

r=ζp^1θ1+ζp^2θ2+ζp^3θ3+・・・+ζp^(p−1)θp−1+ζp^pθp

 θが根であればラグランジュ・リゾルベントの一般式になりますが、θは根ではなく根の有理式です。これをどう具体的に作ればいいのかかがわからないのです。なお、添え字の数値が1ずつ増えているのは、ある条件を満たす置換を施しているから。なお、r^p∈Kの証明はわかるし、面白いです。ここはラグランジュ・リゾルベントと関わりが深いと思うので、是非とも理解したい。

 そして、2次方程式、3次方程式と同様に、4次方程式についても具体的に解の置換の集合が縮小されていく様子をみてみたいのに、それを実感できずに困っています。

 4次方程式の解の公式を求めるときには、2乗根→3乗根→2乗根→2乗根の添加で体を拡大していくのだから、単純な形で考えると、X^2=P → X'^3=Q → X''^2=R → X'''^2=S という順番で方程式を解く流れになるはずだと思うのですが、実際の解法をみてみると、確かに「3次方程式を解くなかでの2乗根と3乗根の添加→2つの2次方程式を解くなかでの2乗根2回の添加」という段取りになってはいるものの、それと解の置換がうまく対応していかないのです。というか、それを具体的に示せない。

 最初の正規部分群は交代群なのだから、交代群の置換のみをゆるす2次方程式が出てくると気持ちいいのですが…

 3次方程式の場合はきれいでした。ラグランジュ・リゾルベントのうちのL3(1)^3を考えたとき、解の置換によって2つの結果が出てくることがわかり、これが剰余類が2つになることに対応していたから。

 思えば、解の公式が導けるのは4次までなのだから、具体的な体の拡大&群の縮小をみることができるのは、2次・3次・4次方程式の3パターンだけです。ところが2次はシンプルすぎてかえってわかりにくい。3次はちょうどいいといえばいいけれど、体の拡大&群の縮小の段階が2段階だから、やっぱりさびしい。それに、複数確かめられるから具体的なのであって、そうなると4次方程式の場合がどうなるのかみてみないと、やっぱりしっくりこないのです。

 しかし、ラグランジュ・リゾルベントの定義式そのままの形で話を展開しているページになかなか出会うことができません。ちなみに、先日リンクした、ラグランジュ・リゾルベントでがんばっておられる方は(ブログのタイトルがフィボナッチ数列だ^^〜)、私が勘違いしていなければ、最終的にはL4(2)についての6次方程式、つまりL4(2)^2についての3次式を使っておられると思うのです。↓
http://blog.livedoor.jp/sh11235/archives/25311677.html

 このときにくくれる解の置換は、4次方程式のリゾルベントと格闘するの巻で示した L4(1)^4+L4(3)^4 と同じになるかと思います。たぶん。

 もしかして、4次方程式の場合の最初の「2乗根→3乗根」は、6次方程式を3次方程式とみなして、3次方程式を「2乗根→3乗根」として解くこととは対応していないのでしょうか。

 何かの2乗の3次方程式ではなく、何かの3乗の2次方程式とみなせるものができていれば、2乗根で2つに分けられ、3乗根で3に分けられて、それがクラインの4元群になってくれるととっても気持ちがいいのだけど…

 で、すっかり煮詰まってしまって、どうしたものかと思い、『数学ガール/ガロア理論』の巻末にある「参考文献と読書案内」をざっとながめていたのです。そうしたら、ある1冊の本に心がとまりました。その本に心がとまったそのことが、何かのメッセージだと感じました。しかし果たしてその道は、ドゥルーズ『差異と反復』にもどる道と同じ方向なのだろうか…と首を傾げつつ、本の到着を待っているところです。

 きっとへんなこといっぱい書いていると思いますが、気づいたその都度、訂正していきます。とりあえず経過記録ということで…

(つづく)
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結局勉強する偶置換・奇置換、交代群

 結城浩『数学ガール/ガロア理論』を参考書にしながら、ドゥルーズ『差異と反復』第四章のごく一部を読むための準備をしています。『数学ガール/ガロア理論』についてはネタばれ注意です。m(_ _)m



 4次方程式のリゾルベントはまだ解決しておりませんが、結局、偶置換・奇置換、交代群も勉強しておくことにしました。『数学ガール/ガロア理論』に交代群は出てきていなかったよな?と思いきや、ちゃんとあるところ(別のところ)で出てましたね、さすが!(^^)

 きょうは『数学ガール/ガロア理論』からは離れます。というか、最近ちょっと離れ気味〜

 これまでカードの入れかえをイメージしつつ解の置換について考えてきたわけですが、たとえば4枚のうちの2枚だけをお互い入れかえて、ほかは動かさないような入れかえのことを、互換というのだそうです。それぞれの置換はいってみれば互換をつなげたものと考えることができますが、このなかで偶数個の互換による置換を偶置換、奇数個の互換による置換を奇置換というようです。

 たとえば、[3214]は1と3だけの互換で1個だから奇置換、[2143]は1と2、3と4の2個の互換だから偶置換ということになるかと思います。ちなみに[3214]は、[1234]の左2枚を交換して[2134]としたのち、まんなか2枚を交換して[2314]にして、さらに左2枚を交換して[3214]となると考えてもいいので、1つの置換を互換の組み合わせで示すとき、その表し方は一通りではなさそうです。ただし、偶数か奇数かは一致する、と。

 で、こうなってくると、まんなか2枚を入れかえることを[1324]と書くのは紛らわしいので、これからは(2 3)と書いていきたいと思います。「2と3を入れかえる」という意味で。[1234]---(1 2)---→[2134]---(2 3)---→[2314]---(1 2)---→[3214] という具合に。

 ほんでもって、偶置換の全体を交代群というらしいのです。つまり遇置換の集まりは群をなす、と。単位元も遇置換だから、単位元があってよかったね、という感じ。4枚のカードの入れかえでいえば、クラインの4元群の要素になる形のものはまさに偶置換だし、それ以外にも、

 (1 2)(1 3)→ [3124]●   (1 2)(1 4)→ [4132]○
 (1 2)(2 3)→ [2314]○   (1 2)(2 4)→ [2431]●
 (1 3)(1 4)→ [4213]●   (1 3)(3 4)→ [3241]○
 (2 3)(2 4)→ [1423]○   (2 3)(3 4)→ [1342]●

があります。なお、先に書いたように、( )( )の部分の表し方はいろいろあろうかと思います。●の4つ、○の4つは、群にはなれないけれど、まるでクラインの4元群のような関係性になっていますね。

 この12個の要素からなる交代群は、4枚のカードの入れかえの全体S4の部分群となっているわけですが、なんと、対称群(カードの並べかえやあみだぐじの群)の交代群は正規部分群になるのだとか。

 もはや正規部分群が遠い昔の話になってしまいました。正規部分群とはなんだったかというと、もとの群の要素を左から反応させても右から反応させても結果が同じになるような部分群のことでした。

 少し見方を変えると、3次の場合でいえば、S3の要素の1つをa、正規部分群をC3とした場合、C3★a=a★C3の左から、aの逆元をかけると、a^(−1)★C3★a=C3となり、正規部分群というのは、もとの集合の要素の逆元とその要素で挟み込んだ場合、自分自身と一致するような、そんな部分群だと捉えることもできます(このあたりの参考文献は遠山啓『代数的構造』です)。

 具体的に確認すると、

S3={[123],[231],[312],[213],[321],[132]}
C3={[123],[231],[312]}

(例1)[231]★{[123],[231],[312]}★[312]
        ={[231],[312],[123]}★[312]
        ={[123],[231],[312]}←C3

(例2)[321]★{[123],[231],[312]}★[321]
        ={[321],[213],[132]}★[321]
        ={[123],[312],[231]}←C3

 正規部分群以外だとこうはいかないのかどうか、C2a={[123],[213]}でやってみると、

(例3)[231]★{[123],[213]}★[312]
        ={[231],[321]}★[312]
        ={[123],[132]}←C2aにならない

(例4)[321]★{[123],[213]}★[321]
        ={[321],[231]}★[321]
        ={[123],[132]}←C2aにならない

 ※ただし、[213]のように、結果がC2aになる相手もいる。

 考えてみれば、(遇置換)★{遇置換の全体}★(遇置換)は、{遇置換の全体}のなかでぐるぐるまわしているだけだから結果は{遇置換の全体}となることがわかるし、(奇置換)★{遇置換の全体}★(奇置換)の場合は、(奇置換)★{遇置換の全体}で、それぞれの要素がいったん奇置換になり、そのあとまた奇置換を施してそれぞれの要素が偶置換にもどるので、やはり結果は{遇置換の全体}にもどるというのは、そりゃそうだろうな、とは思います。

 じゃあ、中央の集合が奇置換全体の集合でも同じことが言えるんじゃなかろうか?と思うわけなのですが、結局あれですかね、単位元が入っていなくて部分群になれないという、そういう問題なんですかね。どうなんでしょうか。

 ちなみに、対称群のなかの遇置換と奇置換の個数は同じになるのだそうです。1つの遇置換に、ある置換を1回施したら奇置換になるわけで、その相手ももとの集合にいるわけであり、逆のこともいえるから、同じ数ずつになってくれないと困るといえば困ります。

 ってことは、解の置換について考えるとき、最初の正規部分群はいつも交代群で、それはつまり全体の半分であり、最初の一歩の剰余類はつねに2つということになりそうですね。剰余類のところで出てきた{C3,C3★[213]}がまさにそのことを表している感じがします。→遇置換の集合と奇置換の集合の2つに分けられて、奇置換の集合は偶置換の集合に、ある1つの置換を施したものだ、と。

(つづく)
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クラインの4元群/レヴィ=ストロースもからめて寄り道

 結城浩『数学ガール/ガロア理論』を参考書にしながら、ドゥルーズ『差異と反復』第四章のごく一部を読むための準備をしています。『数学ガール/ガロア理論』についてはネタばれ注意です。m(_ _)m



 ひきつづき4次方程式のリゾルベントと格闘している最中ですが、気分転換も兼ねてクラインの4元群についてざっと眺めておくことにしました(ちなみに『数学ガール/ガロア理論』にこの名は出てきません)。

 4次方程式のガロア群の連鎖のなかで要素数4つのH4という群が出てくるのですが、これはいわゆる「クラインの4元群」になっているのです。元は[1234][2143][3412][4321]の4つ。[1234]のほかは、[1234]のうちのどれか2つを入れかえて、残りの2つも入れかえた形になっています。

 クラインの4元群については、論理学の中の群論的構造でその名を出しましたが、あのときちょっとだけ触れたレヴィ=ストロースのカリエラ型婚姻規則のことについてもう少し詳しくみていきます。といっても、帰ってこられなくなると困るので、寄り道程度でおさまるように。

 ちなみにレヴィ=ストロースというのは言わずとしれた構造主義の祖であり、平たくいえば人文科学に群論を応用した人です。協力者には数学者のアンドレ・ヴェイユがいました。

 今回の参考文献は山下正男『思想の中の数学的構造』(ちくま学芸文庫)です。なお、橋爪大三郎『はじめての構造主義』にもカリエラ型婚姻規則について書かれた部分があるのですが、いままでちゃんと読んでこなかったこの部分をこのたび初めてマジマジと読んでみたら「???」の状態に…。また、山下正男さんの本のなかでもよくわからない部分が…。

 そのあたりのことについて次のページに詳しくとりあげてあり、助かりました。感謝!↓

■犬Q日記>伝統論理学の数学的構造
http://ccoe.main.jp/easy_Diary2/ dia2011.html#September11_2011

 もうひとつ、別の方のページもリンクしておきますね。

■数学屋のめがね>
レヴィ・ストロースの「親族の基本構造」における群構造の理解
http://blog.livedoor.jp/khideaki/archives/51808939.html

 さて、ではその内容をざっと見ていきます。

 オーストラリアのカリエラ族は、部族内に4つのセクションをもっているそうで、これを仮にA、B、C、Dとすると、結婚できるのはAとBの人、CとDの人だけなのだそうです。そして、夫A+妻Bならば、子どもはDに所属し、夫C+妻Dならば、子どもはBに所属します(夫を先に書くことに深い意味はありません、そろえないとわかりにくいのでそろえます)。また、夫D+妻Cの子どもはAに所属し、夫B+妻Aの子どもはCに所属します。

     夫A+妻B → 子どもD
     夫C+妻D → 子どもB
     夫D+妻C → 子どもA
     夫B+妻A → 子どもC

 そうすると、子どもの性別によってその後の婚姻関係が変わってきます。いま、夫婦のタイプを上から順にM1、M2、M3、M4とし、子どもが男性である場合の婚姻のタイプを、両親がM1であればf(M1)というふうに表し、子どもが女性である場合の婚姻のタイプを、両親がM2であればg(M2)で表すとすると、

  f(M1)=M3、f(M2)=M4、f(M3)=M1、f(M4)=M2
  g(M1)=M2、g(M2)=M1、g(M3)=M4、g(M4)=M3

という関係が成り立ちます。

 この規則で磯野家・波野家・フグ田家を分けてみました。参照:ウィキペディア>サザエさんの登場人物

    A…波平の父、サザエ、カツオ、ワカメ、タイ子
    B…波平の母、マスオ、ノリスケ
    C…フネ、なぎえの夫、タラオ、イクラ
    D…波平、なぎえ

 fというのは、男の子を生むことにより新しいカップルを生み出す作用であり、gというのは、女の子を産むことにより新しいカップルを生み出す作用と考えればいいのかもしれません。そうすると、波平の両親は波平を生むことでf(M1)を行い、波平夫婦はサザエを生むことでg(M3)を行い、サザエ夫婦はタラオを生むことで、タラちゃんが結婚したらf(M4)を行うことになります。それはそうと花沢さんはBセクションに入ってるんでしょうか!?^^

 この、カップルの組み合わせ[M1 M2 M3 M4]を元と考え、新しいカップルの組を生み出すことを「演算」と考えて、群がつくれるかどうかを考えたいのです。先の一覧をもう一度。

  f(M1)=M3、f(M2)=M4、f(M3)=M1、f(M4)=M2
  g(M1)=M2、g(M2)=M1、g(M3)=M4、g(M4)=M3

 Mを省略して数字だけで考えていくと、親世代が[1234]であったら、息子たちの婚姻タイプは[3412]となります。1と3、2と4を交換した形です。そして、その息子たちの婚姻タイプは、[1234]となってもとにもどります。

 また、娘たちの婚姻タイプは、[2143]となります。1と2、3と4を交換した形です。こちらも、次の娘たちの婚姻タイプは[1234]にもどります。

 さらに、[1234]の息子たちの世代[3412]の娘たちの世代の婚姻タイプは[4321]となり、これは[1234]の世代で1と4、2と3を交換した形になってます。娘たちの息子世代も同様に。ということは結局、婚姻カップルの変遷の組み合わせは{[1234],[3412],[2341],[4321]}となり、クラインの4元群になっている、というわけです(たぶん)。

 レヴィ=ストロースの『親族の基本構造』を読んでいないので(Amazonですごい値段〜)、何かと不安は残りますが、これ以上立ち入ると寄り道でなくなってしまうので、もとにもどりまーす。

(つづく)
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4次方程式のリゾルベントと格闘するの巻

 結城浩『数学ガール/ガロア理論』を参考書にしながら、ドゥルーズ『差異と反復』第四章のごく一部を読むための準備をしています。『数学ガール/ガロア理論』についてはネタばれ注意です。m(_ _)m



 さて、2次・3次・4次方程式の解の公式を導くとき、何をどう添加しているのか。のなかで、4次方程式の解の公式を導くプロセスについてちょっと触れました。ちなみに、ウィキペディアの四次方程式のところには、フェラーリ、デカルト、オイラー、ラグランジュの方法が載っていて、どの場合も「三次分解方程式」に帰着させて解く方法になっています(ラグランジュの方法はラグランジュによるフェラーリの方法の解釈として説明されている)。

 いまはこのなかのラグランジュの方法について考えたいのですが、ラグランジュ・リゾルベントを使ってどうもっていったらいいのか、すっかり行き詰ってしまっています。なお、おもにこちらのページを参考にさせていただいています↓ http://galois.motion.ne.jp/stories/G_Math_07.html

 結局のところ、リゾルベントって複数あるのですね。というか、解を使って表した式のことをリゾルベントとよぶのかな? そのうちのひとつがラグランジュ・リゾルベントだ、と。

 で、ラグランジュ・リゾルベントの一般式でn=4とすると、

  L4(1)=iα1+i^2α2+i^3α3+i^4α4
  L4(2)=i^2α1+i^4α2+i^6α3+i^8α4
  L4(3)=i^3α1+i^6α2+i^9α3+i^12α4
  L4(4)=i^4α1+i^8α2+i^12α3+i^16α4

となります。2次方程式のときには2乗して、3次方程式のときには3乗したのだから、4次方程式のときには4乗したくなるというもの。

 ということについて考えるために、いまいちど3次方程式とラグランジュ・リゾルベントの関係()にもどると、L3(1)^3となるのは[123][231][312]の場合で、これは6つの解の置換を要素とする集合のうちの、位数(要素数)が3の巡回群になっています。つまり、3枚のカードでいえば、端から1枚とってもう片方の端にまわすことを続けるような、そんな置換の集合。

 そのことを式の中で考えていくと、

  L3(1)=ωα1+ω^2α2+ω^3α3
     =ω(α1+ωα2+ω^2 α3)
     =ω(ωα2+ω^2α3+ω^3α1)

と変形できて、これを3乗すれば、ω^3=1より、かっこの部分だけが3乗された値になるので、結局[123]を[231]にかえてもL3(1)^3の値は変わらないということがわかります。原始根がここで役に立つというか。同様にω^2でくくってあげれば、[312]とかえていいこともわかります。

 L3(2)についても同様のことがいえて、なおかつ、L3(1)とはα1とα2が入れかわっているので、L3(2)の場合も、(単位元が入っていないので部分群にはならないのだけれど)[213]をもとにした巡回群のような形になることがわかります。

 同じことを4次方程式のラグランジュ・リゾルベントでも考えられるので、L4(1)^2は[1234][2341][3412][4123]のどれでも同じ値をとるということがいえます。さらに、

  L4(1)=iα1−α2−iα3+α4
  L4(3)=−iα1−α2+iα3+α4
     =iα3−α2−iα1+α4

から、L4(3)はL4(1)で1と3を入れかえた形になっているので、[3214][2143][1432][4321]のどれでもOKということがわかります。

 だから、和をとって L4(1)^4+L4(3)^4 にすると、[1234][2341][3412][4123]にとってはこのままの式であり、[3214][2143][1432][4321]にとっては、L4(3)^4+L4(1)^4 になると思えば、結局、L4(1)^4 と L4(3)^4 の和は、これら8つの置換で不変となると考えてもいいのではなかろうか…というところまでなんとかたどりつきました。

 ところが、この元の集合と『数学ガール/ガロア理論』でユーリちゃんが描いてくれたケイリーグラフ(p.346)をつきあわせてみると、L4(1)^4、L4(3)^4 それぞれのグループではまとまっておらず、2つずつ飛び地になっているのです。そして2つをあわせると、ある4つのグループと、別の4つのグループがひとつにまとまるのです(本当はこれら4つが縦にならんでいてくれたらすっきりするのだけれど、そうはなっていないようで…)。

 飛び地になるのはひとまずOKにするとしても、同じように残りの16個の元を8個ずつにまとめるためには、いったいどういう式を作ればいいのか、それを思いつかないのです。いや、先の参考ページに式はのっているのから、それにあわせればいいんだろうけれど、ラグランジュ・リゾルベントを使ってどうつくったらいいかわからないというか。もしかして、一般式からはなれてもいいのかしらん?

 3次のときには ω^4=ωとなることから、α1とα2を入れかえられましたが、さて4次の場合はどうしたものか。L4(2)の使い方もわからないし。

 そういえば、もうひとつ別のページも見つけています。根気がすごい!↓
http://blog.livedoor.jp/sh11235/archives/25311677.html

 私もがんばろうっと。

(つづく)
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2次方程式、3次方程式とラグランジュ・リゾルベントの関係

 結城浩『数学ガール/ガロア理論』を参考書にしながら、ドゥルーズ『差異と反復』第四章のごく一部を読むための準備をしています。『数学ガール/ガロア理論』についてはネタばれ注意です。m(_ _)m



 はじめに前回の補足をば。前回のエントリのなかで、いま問題となっているのは「その方程式は解けるのか」ということだ、というようなことを書きましたが、これは「いつでも解けるのか」としたほうがよかったことにあとから気づきました(訂正済)。また、“その”をつけると係数が具体的にあたえられた方程式みたいだから、“その形の”としたほうがよかったですね。

 さて、それはそうとして、5次方程式の解の公式が作れないのはなぜなのか考えていく前に、気になることがひとつあります。何しろこの一連のエントリを書くことになったそもそもの動機は『差異と反復』のなかに出てくる“部分分解式の滝”を理解したいということであり、カテゴリー名も「ガロア理論」ではなくて「ラグランジュ・リゾルベント」にしてあるのに、結局ラグランジュ・リゾルベントってなんなのかということがよくわからないままだということ。

 なんだかこのままだと、ラグランジュ・リゾルベントは3次方程式の専属ツールのようにみえてしまいそうなので、2次方程式と4次方程式についても、ラグランジュ・リゾルベントがどう関わっていくのかみていきたいのです。

 というわけで、まずは2次方程式について考えて、3次方程式についてもあらためてその意味をながめたのち、4次方程式へ進んでいく予定です。

 2次方程式の場合、ラグランジュ・リゾルベントの一般式においてn=2なので、k=1、2の2つの式があり、原始2乗根ζ2=−1を使って次のように表されます(2つの解をα、βとする)。

  L2(1)=(−1)α+(−1)^2 β=−α+β
  L2(2)=(−1)^2 α+(−1)^4 β=α+β

 L2(2)のほうはそのまま対称式なので、解と係数の関係を使って−b/aと表せます。L2(1)のほうはそのままでは対称式()ではないけれど、2乗すると対称式になって、係数で表せるようになります。

  L2(1)^2=(−α+β)^2
      =(α−β)^2
      =(α+β)^2−4αβ
      =(−b/a)^2−4c/a
      =(b^2−4ac)/a^2

 分子に b^2−4ac が見えますが、すなわちこれが解の公式の√の中身です。

 というところまでは『数学ガール/ガロア理論』に書いてあって、たぶんこのあとは平方根をとってL2(1)を求めて、L2(2)との連立方程式を解けばいいのだろうと思ったですが、平方根をとるときに±をつける必要はないらしいということを、検索するなかで知りました。実際そうしないと変なことになるのですが。

 そういえば3次方程式で最終的に3乗根をとるときにも、やっぱりωはつけませんでした。そうしないとリゾルベントに複数答えが出てしまうし、そもそも定義式そのものに1の原始根が入っているのだから、平方根にしろ3乗根にしろ、原始根をのぞいた形のものだけ答えればいいのでしょうか。そうしないと困るけど、そうしていい根拠がいまいちはっきりしないのでした。

 で、α={L2(2)−L2(1)}/2={−b−√(b^2−4ac)}/2a、β={L2(1)+L2(2)}/2={−b+√(b^2−4ac)}/2aとなって、解の公式はきれいに導けます。そうですよね、±のうちのマイナスはここで出てきてほしい感じ。

 とにもかくにも言えることは、2次方程式の解の公式を求めるときには、係数体にL2(1)を添加すればよいということ。ここに例の√(b^2−4ac)があらわれてくるので。

 さて、次に3次方程式の場合についても、あらためてラグランジュ・リゾルベントの意味を考えてみます。3次方程式のラグランジュ・リゾルベントはこんな感じでした↓

   

 そして、解をL3(1)とL3(2)を使って表すことができるのですが、ここでL3(1)とL3(2)そのものが対称式になっていれば、直接、解と係数の関係からL3(1)とL3(2)を係数で表せて、そのまま解の公式にもっていけるのに、残念ながらそうはなっていないので、それぞれの3乗を求めるところから入っていかなければならなかったのでした。

 ところで、L3(1)に含まれている解を6通りに入れかえてそれぞれ3乗すると、その結果はL3(1)^3 と L^3(2)^3 の2通りにわかれることを以前確認しました。ちなみに、[123][231][312]はL3(1)^3になり、[132][213][321]はL3(2)^3になります。

 だから、L3(1)^3については、[123][231][312]のどれでもあてはまるし、言い方を変えると、どれか1つには絞れないということになります。

 ほんでもって、L3(1)^3 と L3(2)^3 を求めるために、これらを解にもつ2次方程式を作りたいので、L3(1)^3+L3^(2)^3 と L3(1)^3 L3(2)^3 を(変数変換したあとの)係数で表します。

 和のほうは、(L3(1)+L3(2))(L3(1)+ωL3(2))(L3(1)+ω^2 L3(2))と変形できることから、最終的には 27α1α2α3 という対称式になってくれて、解と係数の関係を使って係数で表すことができます。

 積のほうも、L3(1) L3(2) を整理すると α1^2+α2^2+α3^2−(α1α2+α2α3+α3α1) という対称式になるので、係数で表せます。

 そうして、x^2−(L3(1)^3+L3(2)^3)x+L3(1)^3 L3(2)^3=0 という2次方程式を作り(係数で表し)、これを解くと L3(1)^3 と L3(2)^3 が係数で表せるので、あとは3乗根をとればいいということになります(方程式の解はL3(1)とL3(2)を使って表せるので)。

 L3(1)^3 と L3(2)^3 は、共通部分をA、Dを使って表すと、A+√D、A−√D という形になっています(A、Dはそれぞれ方程式の係数で表される式)。つまり、この2次方程式を解く段階で√Dを係数体Kに添加していることになり、3乗根をとる段階で、3√(A+√D)を添加して体K(√(A+√D))に拡大しているというわけです。ここまでくれば、解の公式が導ける、と。

 3次方程式のラグランジュ・リゾルベントについては、以前よりだいぶ慣れてきた感じがします。あとは、巡回群との関係をおさえたいです。それをおさえたうえで4次方程式について考えていきたいのですが、これがなかなかどうして大変なのよ……

(つづく)
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2次・3次・4次方程式の解の公式を導くとき、何をどう添加しているのか。

 結城浩『数学ガール/ガロア理論』を参考書にしながら、ドゥルーズ『差異と反復』第四章のごく一部を読むための準備をしています。『数学ガール/ガロア理論』についてはネタばれ注意です。m(_ _)m



 気がつけば、ラグランジュ・リゾルベントを考え始めて1ヶ月たちました。とりあえず一般式から始めて、ラグランジュ・リゾルベントを使って3次方程式の解の公式を導いていけることをざっとながめたのですが、あのとき体の何をどう拡大していたのかをあらためて考えていきます。

 その前に、2次方程式 ax^2+bx+c=0 でウォーミングアップ。方程式を解くということは、最終的に「x=なんとか」 の形にもっていくことですが、何しろx^2があるので、そのまますぐに「x=なんとか」を導くことはできません。そこでまずは、 (xの1次式)^2=[xを含まない式] に形をかえます。そのプロセスの一例を示すと…

 両辺をaで割って、

   x^2 + (b/a)x + c/a =0

 c/a を移項して、

   x^2 + (b/a)x = −c/a

 左辺を(x+○)^2の形にしたいので、2×○=b/a になるように、両辺に ○=b/2a の2乗を加えて、

   x^2 + (b/a)x + (b/2a)^2 = −c/a + (b/2a)^2

そうすると、

   (x+b/2a)^2 = (b^2−4ac) / 4a^2

というふうに、(xの1次式)^2=[xを含まない式] の形にできました。このあとは、左辺の指数の2を消したいので、平方根(2乗根)をとることになるわけですが、右辺の分子は平方数にはなっていないので、√(b^2−4ac)というものを加えてあげないと平方根をとることができません。

 だから結局、2次方程式の解の公式を得るために、√(b^2−4ac)をこの段階で添加してあげることになります。そうすれば、

   x + b/2a = ±√(b^2−4ac)/2a

        x={−b±√(b^2−4ac)}/2a

という2次方程式の解の公式が出てきます。

(なお、有理数体で考えるときには、出発段階から文字a、b、cを添加したうえで考えなければならないし、ζ2の添加も必要です。)

 では、3次方程式の解の公式を導くときには、何をどう添加しているのでしょうか。まずはラグランジュ・リゾルベントを定義したうえで、L^3とR^3を求めました。この段階ではLとRは方程式の係数では表されておらず(というか、それを求めるのが目的なので)、L^3+R^3 と、L^3 R^3 を手がかりに、x^2−(L^3+R^3)x+L^3 R^3 =0 に対応する2次方程式を係数(変数変換したあとの係数)でつくり、これを解くことで、L^3 と R^3 を係数で表したのでした。

 ということは、この段階で2次方程式を解いているのだから、2乗根を添加する必要が出てきます。そのあとで、今度はL^3とR^3の3乗根をとれば、LとRを係数で表せて、3つの解がLとRで表せて、係数で表せて、すなわち解の公式にもっていけます。

 結局、3次方程式の解の公式を求めるときには、2乗根と3乗根の2回の添加を行っていることになります。

 ではもうひとつ、4次方程式の解の公式を導くときはどうなのか考えます。ウィキペディア:四次方程式にいくつかの方法がのっていますが、検索していくなかで「4次方程式と5次以上の方程式の Galois 理論」というページを海城中学校・海城高等学校のサイト内にみつけたので、こちらを参考にして考えていきます。↓
http://www.kaijo.ed.jp/education/subjects/ mathematics/pdf/2011summer_6Amitani.pdf

 まずは4次方程式に、3次のときと同様に変数変換を行い、3次の項がない式 x^4+ax^2+bx+c=0 にかえます。そして、左辺を2次式の積 (x^2−kx+l)(x^2+kx+m) に因数分解できるよう係数を決めようとすると、kについての6次式が出てきます。なので、s=k^2 とおけば、sについての3次方程式ができて、3次方程式の解の公式を使ってsが求まります。そうすると、k、l、mが求まるので、先の2次式の積が求まって、この2つの2次方程式を解いて解の公式を求めるという段取りになっています。

 ということは、流れとしては「sについての3次方程式を解く→2つの2次式を解く」というふうになっており、3次方程式の解の公式では「2乗根→3乗根」の順で添加したのだから、4次方程式の場合は「2乗根→3乗根→2乗根→2乗根」というふうに添加していくことになりそうですね。

 だったら5次以上の方程式も、同じように冪根を添加していって、解の公式を導けばよさそうなものなのに、なぜそれができないのか…というのがガロア理論の骨子かと思います。

 そういえば大事なことを書くタイミングを逸してしまっていましたが、いま問題にされているのは、「その方程式に解は存在するかどうか」ではなく、「その方程式はいつでも解けるのか」ということであり、その「解く」というのは、「代数的に解けるかどうか」すなわち四則計算と冪根だけを使って解けるかどうか、ということです。

 考えてみれば、2次にしろ3次にしろ4次にしろ、そして5次にしろ、1次方程式ではなくx^nというものが方程式に含まれているので、それを「x=なんとか」にするためには、どこかで冪根をとらなくてはならないというのは、感覚的にも納得できる話です。どこかで冪根をとるということは、一般式で考える場合、何らかの冪根を添加するということであり、そうして添加を繰り返すうちに「x=なんとか」のなんとかが係数であらわせて、したがって解の公式が導けるということになるのですね。

(つづく)
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最初から体に原始n乗根が入っているとすると…

 結城浩『数学ガール/ガロア理論』を参考書にしながら、ドゥルーズ『差異と反復』第四章のごく一部を読むための準備をしています。『数学ガール/ガロア理論』についてはネタばれ注意です。m(_ _)m



 これまで、「どの世界(範囲)で方程式をとらえるか」ということを考えるとき、スタート地点としては有理数の世界、すなわち有理数体Q上で考えてきました。そして、有理数の世界では答えが出なくても、それに何かを添加して世界を広げる(体を拡大)することで、答えが出せるようになるよ…ということも(だいぶ前の話になっちゃいましたが)考えたのでした。

 ほんでもって、これまで有理数体Qで考えてきた出発点を、これからは係数体Kで考えていきたいのです。係数体というのは、方程式の係数が属している体のことであり、有理数体と係数体は異なるものだという意味ではなくて、これまでは係数体として有理数体を考えてきた、ということです。

 さらに。なんでそんなことをしていいのかいまはとても説明できそうにないのですが、この係数体Kに、最初から1の原始n乗根が含まれていることにしたいのです(ちなみに、こういうことをしても問題がないことには、ガウスの仕事がからんでいるらしいです)。

 そうするとどういういいことがあるかというと、たとえば x^3−2=0 の解は、3√2のほか、1の原始3乗根であるζ3=ωを使って、3√2ω,3√2ω^2と表される2つの数もあるわけですが、もし係数体にωが入っていなかったら、これらの解は登場できないのだけれど、最初から係数体にωが入っているとすれば、3√2を入れるだけで、3つの解をつくせてしまうことになるのです。つまり、3√2を入れるだけで正規拡大できてしまう、と。あらま、ありがたい。

 考えてみれば、x^2=2の解はx=±√2ですが、これも実は√2、√2 ζ2ってことだったのかもしれませんね。ζ2=−1だから。

 それにしても思うことは・・・

 たとえば、

   x^3=2

だと、

   x^3=(3√2)^3

にしてもいいような気がしてきて、

   x=3√2

でもわるくないんじゃないかと思えてきますが、

   x^3−2=0

だと、たとえ

   x^3−(3√2)^3=0

にしても、ここから

   x−3√2=0

をもってくるのはかなり抵抗があるというか、気持ちとして不可能という感じがします。1の3乗根に慣れたいまとなっては、右辺が0の状態で、xの指数が3だと、左辺の2に3つの解がぼわぼわぼわ〜と浮かび上がってきて、

   x^3−2=0
     (   )^3
       ↑
     3√2 ぼわ
     3√2ω ぼわ
     3√2ω^2 ぼわ〜

それが、つまりは

   (x−3√2)(x−3√2ω)(x−3√2ω^2)=0

ってことなんだなぁ、と思えてきます。

 結局のところ方程式が“解けている”というのは、左辺がxの1次式に因数分解できているってことなんだなぁとあらためて思うことであります。だから、すべての解が日の目を見られるように、世界を広げていってあげたい。…広げられるのであれば。

(つづく)
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1の12乗根を自分ひとりで作れちゃう数たち/巡回群と生成元

 結城浩『数学ガール/ガロア理論』を参考書にしながら、ドゥルーズ『差異と反復』第四章のごく一部を読むための準備をしています。『数学ガール/ガロア理論』についてはネタばれ注意です。m(_ _)m



 さて、もう少し1の原始12乗根について考えていきます。円分多項式に触れないままでいるので、ζ12をどう言葉でいったらいいものか(最初の12乗根とでも言いいたいけど最初って何よ?という問題があり)困ってしまっておりますが、とりあえずさらっと先に進みます。(^^;

 今回は1の12乗根たち、つまりζ12、ζ12^2、ζ12^3、…のべき乗はどういうことになるかについて考えます。たとえばζ12^3は、さらに2乗することでζ12^6になれます。また、3乗することでζ12^9になることもできます。そして、4乗したときにζ12^12=1になり、あとは何度かけても同じ数をたどることしかできません。だから、何乗してもζ12^5と同じ数にはなれない。

 一方、ζ12^5はといえば、2乗すればζ12^10になり、3乗すればζ12^15となって、これはζ12^3と同じ数です。また、4乗すればζ12^20つまりζ12^8になれます。実は、ζ12^5は、そのべき乗で、ζ12からζ12^12のどの数にもなれちゃうのです。

 円分多項式に一切ふれないままの状態で恐縮ですが、複素平面の単位円を12等分した点をとり、ζ12^3とζ12^5のべき乗を順に点でつないでいくと、こんな感じになるかと思います↓(ド・モアブルの定理より、2乗することは偏角を2倍にすることであり、3乗することは偏角を3倍にすることなので)



 同じことをζ12でやると、12個の点を順に結んでいくことになるので、正十二角形になりますよね。ζ12^7の場合は、ζ12^5の線を逆にたどるような感じで、同じ星型の図形ができそうですし、ζ12^11の場合はζ12の線を逆にたどって、やっぱり正十二角形になりそうです。

 だからこそ、12乗しないと1になれないわけであり、それゆえ1の原始12乗根なのだ、とも言えるのでしょう。結局、原始12乗根になれる数は、ζ12^kのkの部分が12と互いに素である場合だ、と言えそうです。

 ということは、ζ12、ζ12^5、ζ12^7、ζ12^11 たちは、自分ひとりで1の12乗根を全部作れてしまう数たち、ということになりはしないだろうか。つまり、1の12乗根を生成できる、と。

 ほんでもって、久しぶりにカードの置き換えを考えてみますれば、{[123],[231],[312]}という群は、元は3つあるけれど、実はこれは「左端の1枚を右端にもってくる」という動きを繰り返しているだけであり、いってみれば[231]ひとつあれば成り立つ群です。

 というふうに、ぐるぐるまわしていくだけでできる群を、巡回群といい、まわしていく動きを表す元のことを生成元というようです。逆に言えば、何かひとつの動きの“もと”(生成元)を繰り返すことでできる群が巡回群だということになるかと思います。

 カードの並べ替えの場合は、操作を続けることを演算と考えて、そのうち積と呼ぶようにしたので、繰り返しの操作はべき乗で表されます。すなわち、{[123],[231],[312]}は,{[231],[231]^2,[231]^3}である、と(要素の順番はずれますが)。

 ちなみに、3枚のうちの2枚を入れ替える{[123],[132]}も、[132]を2回やればもとにもどるので、{[132],[132]^2}という巡回群になろうかと思います。

 ん? ってことは…。原始12乗根たちも自分ひとりを何乗かすることで、1の12乗根を全部作れてしまうのだから、生成元になれるんじゃなかろうか。

 この場合は、そのまま複素数の積を演算と考えると、12乗根たちは群{ζ12,ζ12^2,ζ12^3,ζ12^4,ζ12^5,ζ12^6,ζ12^7,ζ12^8,ζ12^9,ζ12^10,ζ12^11,ζ12^12}をつくり、そのすべての元を、どれかひとつの原始12乗根のべき乗で表すことができるということを、先ほど確かめたのでした。

 ζ12を使えばそのまんまだし、{ζ12^5,(ζ12^5)^2,(ζ12^5)^3,…,(ζ12^5)^12}でもOK(要素の順番はかわるけど)。これすなわち巡回群ではなかろうか。

 というわけで、ζ12、ζ12^5、ζ12^7、ζ12^11は、1の12乗根を要素とする巡回群の生成元になれちゃうようなのです。すごいじゃん。

(つづく)
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x^n−1の形の式の因数分解と、1の原始n乗根

 結城浩『数学ガール/ガロア理論』を参考書にしながら、ドゥルーズ『差異と反復』第四章のごく一部を読むための準備をしています。『数学ガール/ガロア理論』についてはネタばれ注意です。m(_ _)m



 1つ前のエントリで、“すでに「第10章 ガロア理論」に突入しております、折にふれもどっていきます”と書きましたが、さっそく第4章にもどります。

 今回考えたいのは、1の原始n乗根。1の原始n乗根というのは、n乗したときに“初めて”1になる数であり、たとえば2乗して1になる数は、1と−1がありますが、1は2乗しなくてもそのまま1なので、原始2乗根とはいえません。−1のほうは2乗して初めて1になるので、原始2乗根です。

 1の3乗根はというと、x^3=1の解、つまりはx^3−1=0の解として考えることができます。まず、x=1があてはまることがすぐにわかりますが、1は3乗しなくてもそのまま1なので、やっぱり原始3乗根ではありません。じゃあどうやって原始3乗根を求めればいいのかというと、左辺がx−1を因数にもつことから、(x−1)(x^2+x+1)=0 と因数分解できるので、x^2+x+1=0 を解いて求めることができます。出てくる2つの解は複素数であり(x=(−1±√3 i)/2)、実数の範囲を超えた話になっています。なお、どちらの数も3乗して初めて1になるので、どちらの数も1の原始3乗根です。

 さらに1の原始4乗根は、x^4=1、つまりx^4−1=0の解で、(x−1)(x+1)(x−i)(x+i)=0と左辺が因数分解できることから、x=1、−1、i、−iの4つありますが、1はそのまま1だし、−1は4乗するまえに2乗で1になってしまうのでだめで、原始4乗根はiと−iです。

 こういうふうに、何乗かして初めて1になる数は、なんらかの方程式の解として考えることができます。それは、多項式の根として考えることができる、ということでもあります。x^2+x+1=0の解であれば、x^2+x+1の根というふうに。そのような多項式をΦk(x)と表し、kのところに何乗根にあたる数値を入れると、

 x^2−1=(x−1)(x+1)から、Φ2(x)=x+1
 x^3−1=(x−1)(x^2+x+1)から、Φ3(x)=x^2+x+1
 x^4−1=(x−1)(x+1)(x^2+1)から、Φ4(x)=x^2+1

というような感じで求めることができそうな気がします。ちなみに、Φ1(x)=x−1です。このような1の原始n乗根が、ラグランジュ・リゾルベントで出てきたζnというわけです。

 ところで、原始4乗根は、2乗すると−1になりますが、これは原始2乗根に等しいです。すなわち、ζ4^2=ζ2という関係が成り立ちます。そのことについてもう少しみていくために、原始12乗根を考えます(返す返すも村木先生はうまい)。

 1の12乗根を求めるためには、x^12−1を因数分解しなくてはいけないわけですが、1と−1とiと−iを根にもつことから、次のところまではすぐにいきつけます。

 x^12−1=(x−1)(x+1)(x−i)(x+i)(・・・・・・)

 最初の4つのかっこの式は、x^4−1の因数分解と同じです。で、続く(・・・・・・)のところの式は、x^12−1をx^4−1でわることで、x^8+x^4+1 と求められますが、このx^8+x^4+1の根を直接求めようとするとき、たとえばX=x^4とおくと、X^2+X+1となり、原始3乗根を求める式と同じなので、さらにその4乗根ということになり、考えただけでもめんどくさそうです。

 そこで方向性を変えたい。『数学ガール/ガロア理論』では、複素平面上でド・モアブルの定理を使って視覚的にとてもわかりやすく話が展開していくところをがっさり割愛して先に進み、12乗して1になる数には、12乗して初めて1になる数のほか、6乗して初めて1になる数、4乗して初めて1になる数、3乗して初めて1になる数、2乗して初めて1になる数、1そのものが含まれているはずだ、ということからながめてみたいのです。なぜなら、6乗して1になるのなら12乗しても1になるはずであり、4乗して1になるのなら12乗しても1になるはずなので。

 つまり、x^12−1=0は、ζ6、ζ4、ζ3、ζ2、ζ1を解としてもつはずです。みんな12乗しても1になるはずだから。ということは、x^12−1は、Φ6(x)、Φ4(x)、Φ3(x)、Φ2(x)、Φ1(x)を因数としてもつはず。また、Φ5(x)やΦ7(x)はもっていないはず。

 このうち、Φ1(x)とΦ2(x)とΦ3(x)とΦ4(x)はわかっているので、残るΦ6(x)について調べると、

 x^6−1=(x^3+1)(x^3−1)
    =(x+1)(x^2−x+1) (x−1)(x^2+x+1)
    =Φ2(x)(x^2−x+1) Φ1(x)Φ3(x)
    =Φ1(x)Φ2(x)Φ3(x)(x^2−x+1)

となり、すなわちΦ6(x)=x^2−x+1となることがわかります。この式の根のなかには、ζ6のほか、ζ6^5も含まれています。なぜならば、ζ6の5乗は、そのままではもちろん1になれず、2乗しても3乗しても4乗しても5乗しても1になることはできず、結局6乗するしか1になる道がないので。

 そのほかの数たち、たとえばζ6^3は、これを2乗したときにζ6^6=1になれるので、原始6乗根ではありません。ちなみに、2乗したときに初めて1になる数といえば−1であり、すなわち、ζ6^3=ζ2^1ということになります。まるで分数の約分みたいなことができる。

 ということは、結局、

 x^12−1=Φ1(x)Φ2(x)Φ3(x)Φ4(x)Φ6(x)Φ12(x)

となることがわかり、Φ12(x)=x^4−x^2+1で、この式の根は、ζ12の1乗、5乗、7乗、11乗になるというわけです。

 以上のことを、複素平面の単位円上で考えると、とてもわかりやすくて楽しいです。自分で図を描きおこすかわりに、くろべえさんのページをリンクさせていただきま〜す。m(__)m
http://kurobe3463.blogspot.jp/2007/05/ figure-of-radical-root-of-1.html

 ちなみに、『数学ガール/ガロア理論』とは違って、三角関数版の式を示しておらず、円分多項式という言葉も出しておらず、話も一部逆転した形になっていて、何かと不正確・不十分なことになっていると思いますが、原始n乗根の雰囲気をつかむためのエントリとして書いてみました。

(つづく)
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