TETRA'S MATH

数学と数学教育

ベキ集合上のフィルター (2)

 ベキ集合P(S)の要素は、もとの集合Sの部分集合なのだから、含む含まれるの関係でウィキペディアにのっているようなハッセ図()を書くことができます。で、たとえば{りんご,みかん,バナナ}のベキ集合を考えた場合、{りんご}が入っているフィルターの集合は、ハッセ図の{りんご}から上にのびる部分にある集合は全部含んでいなければいけないことになります。

 要素を1つ増やして、{りんご,みかん,バナナ,もも}とすると、部分集合は2^4=16個あり、「特性関数」という関数 (1)で考えたのと同じ1と0の表を考え、たとえば{みかん}を0100、{バナナ,もも}を0101、{りんご,みかん,もも}を1101と示すことにすると、含む含まれるの関係は次のようなハッセ図になります。



 そして、このなかの{みかん}0100を含むフィルターを考えると、要素として「みかん」を含む部分集合、つまり、□1□□の数値をしている部分はみんなそのフィルターとなる集合に含まれているということだから、下の青い点の部分が該当するということになりますよね? そして、これらの青い点は、もとの包含関係をもとに選ばれているのだから、青い点どうしの中にも水色の線分のような包含関係があることになりますよね?



  フィルターの条件としては、各要素の交わりもフィルターのなかに含まれていなければならないけれど、いまはどの要素も□1□□の形をしていて、それぞれの交わりの要素も必ず□1□□の形をしており、それはすなわち0100と絡んでいるというわけだから、すでに含まれているはず。

 ということはあれでしょうか、フィルターというのは、その中に含まれるいちばん小さい(順序関係の最初)と絡む要素を抽出した集合なのでしょうか。あら、でも、集合によっては下限()のないフィルターというものもあるのだろうか・・・

 
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ベキ集合上のフィルター (1)

 郡司ペギオ‐幸夫『時間の正体 デジャブ・因果論・量子論』に出てくるジーブについて、うーん、うーんとうなっていたとき、なんだかんだでフィルターという数学用語を知りました。フィルターといえば「ろ紙」などをイメージしますし、sieveは“ふるい”という意味らしいのですが、フィルターやsieveはいったい何を取り除き、何を抽出したいのでしょうか?

 で、このたび「フィルター 冪集合」で検索をかけていたら、とても興味深いページと出会いました。

  janpal集合論のABC

「時間は素数である」とかも言ってみたくなるところである.

だって。わぉ。

 上記リンク先の後半部分に興味津々ですが、とりあえずベキ集合上のフィルターとはなんぞや、ということについて考えてみます。集合はもう一度{りんご,みかん,バナナ}を使いますが、ここでは集合Sとよびます。

 もう一度、集合Sの部分集合を書くと、
 
  Φ
  {りんご}、{みかん}、{バナナ}
  {りんご,みかん}、{りんご,バナナ}、{みかん,バナナ}
  {りんご,みかん,バナナ}

の8個あります。で、これらの8個の集合を要素にもつ集合がベキ集合で、この集合をP(S)と示すことにします。Pはベキのpowerからとってきて、集合Sのベキ集合という意味でのP(S)です。

P(S)={Φ,{りんご},{みかん},{バナナ},{りんご,みかん},{りんご,バナナ},{みかん,バナナ},{りんご,みかん,バナナ}}

 ということは、P(S)の部分集合の要素は、Sの部分集合であることがわかります。集合が入れ子になっていて、部分集合の意味するところが2段階になっていてわかりにくいけれど。

P(S)の部分集合↓

 {Φ,{みかん}}
 {{りんご},{バナナ},{みかん,バナナ}}
 {{みかん},{りんご,みかん},{りんご,みかん,バナナ}}

など。この中の1つ1つの要素{りんご},{みかん,バナナ}などは、Sの部分集合。おお、集合でもあり、要素でもあるのね。このフレーズはどこかできいたような・・・!?

 で、集合P(S)の部分集合Fが次の条件を満たすとき、FをS上のフィルターとよぶらしいのです。

 1.Fは空集合を含まない。
 2.A∈F、A⊂Bならば、B∈F
 3.A、B∈Fならば、A∩B∈F

 あら? トポロジーに似てますね(って、前もおんなじこと言ってるし)。

 たとえば、集合A1={{りんご},{りんご,みかん},{りんご,バナナ},{りんご,みかん,バナナ}}とすると・・・

・A1は空集合を含んでいない。

・A1は、{りんご}を含むP(S)の要素{りんご,みかん}、{りんご,バナナ}、{りんご,みかん,バナナ}を含んでいる。
 A1は、{りんご,みかん}を含むP(S)の要素{りんご,みかん,バナナ}を含んでいる。
 A1は、{りんご,バナナ}を含むP(S)の要素{りんご,みかん,バナナ」}を含んでいる。

・A1は、{りんご}∩{りんご,みかん}={りんご}、
 {りんご}∩{りんご,バナナ}={りんご}、
 {りんご}∩{りんご,みかん,バナナ}={りんご}、
 {りんご,みかん}∩{りんご,バナナ}={りんご}、
 {りんご,みかん}∩{りんご,みかん,バナナ}
 ={りんご,みかん}
 {りんご,バナナ}∩{りんご,みかん,バナナ}
 ={りんご,バナナ}
 をすべて含んでいる。

なので、集合A1はS上のフィルターである。・・・そんな感じかしらん?

 あ・・・これ、ジーブだ。

(つづく)
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「特性関数」と“ふるい”

 今度は別の集合で考えます。同じくNの記号を使いますが、今度の集合は要素が整数です。

  集合N {1,2,3,4,5,6,7,8,9,10} 

 部分集合は2^10個あります。この中から、2の倍数を取り出した集合をア、3の倍数を取り出した集合をイ、5の倍数を取り出した集合をウと表すことにします。

  部分集合ア {2,4,6,8,10}
  部分集合イ {3,6,9}
  部分集合ウ {5,10}

 前回と同様に特性関数を考えると、f(2)=1、f(4)=0、f(7)=0といった感じになります。

 さて、部分集合アの要素の個数は5個ですが、これは、

   f(1)+f(2)+f(3)+・・・・・・+f(10)
  =0+1+0+1+0+1+0+1+0+1
  =5(個)

と求めることができます。他の場合も同様に。

 では、集合Nから、ア、イ、ウのどれにも属さない要素、つまり2の倍数でも3の倍数でも5の倍数でもない要素の個数を求めるにはどうしたらいいでしょうか。
 
 ベン図をかくと下図のようになります。はやい話、1と7の2個という数値を特性関数を使って求める方法を考えたいのです。

   

 ア、イ、ウのどれにも属さない要素を集めた集合は、アの補集合とイの補集合とウの補集合の交わりとして求めることができそうです。

 アの補集合{1,3,5,7,9} ← とする。
 イの補集合{1,2,4,5,7,8,10} ← とする。
 ウの補集合{1,2,3,4,6,7,8,9} ← とする。

 交わりの集合の特性関数の値は、もとの集合の特性関数の値のかけ算で求めることができたのだから、ア、イ、ウのどれにも属さない要素を集めた集合をエとすると、

 f(x)=f(x)×f(x)×f(x)

となります。実際、これで1つずつ確かめていくと、次のようになります。

 f(1)=1,f(2)=0,f(3)=0,f(4)=0,f(5)=0
 f(6)=0,f(7)=1,f(8)=0,f(9)=0,f(10)=0

 ところで、f(x)=1−fア(x)、f(x)=1−f(x)、f(x)=1−f(x)なのだから、f(x)を求める計算は次のようになります(展開して、積を交わりにかえる)。

 f(x)=(1−f(x))(1−f(x))(1ーf(x))
     =(1−f(x)−f(x)+f(x)×f(x))(1−f(x))
     =1−f(x)
        −f(x)+f(x)×f(x)
          −f(x)+f(x)×f(x)
            +f(x)×f(x)−f(x)×f(x)×fウ(x)
     =1−{f(x)+f(x)+f(x)}
        +{fア∩イ(x)+fア∩ウ(x)+fイ∩ウ(x)}
           −fア∩イ∩ウ(x) 

 xには1から10までの数が入るので、これら10個の式を辺々たすと、集合エの要素の個数は、

 10−{(アの個数)+(イの個数)+(ウの個数)}
   +{(ア∩イの個数)+(ア∩ウの個数)+(イ∩ウの個数)
    −(ア∩イ∩ウの個数)

と表せることがわかります(個数というのは要素の個数のこと)。いまは集合が3つなのでここで終わりですが、集合の数がふえると、+、−を交互に繰り返しながら、重なりの部分を順にたしたりひいてたりしていくことになります。ひきすぎたぶんをたし、たしすぎたぶんをひき、・・・という感じでしょうか。

 この方法を「ふるい」とよぶようなのです。エラトステネスの篩の1回ふるいおとされたやつが次もまたふるいおとされちゃったので、復活させるためにプラスにするというようなイメージだなぁと個人的には思いました。つまり、1〜10までのレバーがあって、このレバーは上(プラス)にも下(マイナス)にも何段階か動くようになっていて、まんなかがゼロだとすると、

まず、10個のレバーを上げる(プラス1)。
→2の倍数、3の倍数、5の倍数のレバーを順に下げると、2、4、6、8、10、3、6、9、5、10のレバーが下げられるので、2、3、4、5、8、9は1段階だけレバーが下げられてゼロにもどるが、6と10は2段階下げられてマイナス1になっている。
→2と3の公倍数、2と5の公倍数、3と5の公倍数のレバーを上げると、6と10がゼロにもどる。
→2と3と5の公倍数のレバーを下げる。(この場合、変化なし)

 そうすると、1と7だけレバーが上(プラス1)に残るので、これをたして、2の倍数でも3の倍数でも5の倍数でもない要素の個数は、2個ということになります。

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「特性関数」という関数 (2)

 集合N{りんご,みかん,バナナ}の部分集合を考えることは、集合Nから集合M{1,0}への関数を考えることと同じであり、この関数を特性関数とよび、部分集合の数だけ特性関数があることがわかりました。この「部分集合の数だけ特性関数がある」というのが今回わかったこと(郡司ペギオ‐幸夫の時間論のときにはよくわかっていなかったこと)です。

 もう一度、1と0の表を眺めてみます。



 この中で、部分集合ウ{りんご,バナナ}と、部分集合オ{みかん,バナナ}の交わりウ∩オを考えると、これは部分集合キ{バナナ}であり、それぞれの特性関数に要素を入れた結果を示すと、次のようになります。

   f(りんご)=1、 f(みかん)=0、 f(バナナ)=1
   f(りんご)=0、 f(みかん)=1、 f(バナナ)=1
   f(りんご)=0、 f(みかん)=0、 f(バナナ)=1
   
 この縦の並びに注目すると、交わりの集合の要素となれるのは、どちらにも入っている要素なので、どちらの特性関数の値も1になっているところだけです。そうなると、かけ算で与えられることがわかります。

  f(りんご)×f(りんご)=f(りんご)→ 1×0=0
  f(みかん)×f(みかん)=f(みかん)→ 0×1=0
  f(バナナ)×f(バナナ)=f(バナナ)→ 1×1=1

 では結びの場合はどうなるかというと、こちらはたし算になってほしいですが、1+1=2なのでそのままというわけにはいきません。考えてみれば、{りんご,バナナ}と{みかん,バナナ}をそのままたすと、{りんご,みかん,バナナ,バナナ}になってしまうので、重なっている部分、つまり交わりの部分をひいてやることを考えます(そう考えていいのかな?)。部分集合ウ{りんご,バナナ}と部分集合オ{みかん,バナナ}の結びウ∪オは部分集合ア{りんご,みかん,バナナ}なので、

  f(りんご)+f(りんご)−f(りんご)×f(りんご)
    =f(りんご) → 1+0−0=1
  f(みかん)+f(みかん)−f(みかん)×f(みかん)
    =f(みかん) → 0+1−0=1
  f(バナナ)+f(バナナ)−f(バナナ)×f(バナナ)
    =f(バナナ) → 1+1−1=1

となるわけです。

 また、それぞれの部分集合の補集合の特性関数の値は、1−f(x)になります(○にはア〜クが入ります)。たとえば、部分集合ウ{りんご,バナナ}の補集合は部分集合カ{みかん}であり、f(x)=1−f(x) となるわけです。片方が1のときにはもう片方は0になり、片方が0のときにはもう片方が1になるので。

 さらに、それぞれの部分集合の要素の個数が知りたいときには、その部分集合の各要素の特性関数の和を求めればいいことになります。要素としてあるものだけが1としてカウントされるので。たとえば、部分集合ウ{りんご,バナナ}の要素の個数は、f(x)の和、つまり、

  f(りんご)+f(みかん)+f(バナナ)=1+0+1=2

というわけです。

(つづく)
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「特性関数」という関数 (1)

 というわけで、特性関数とはなんぞや、ということについてみていきます。今回は遠山啓の説明を参考にしますが、例のごとく書き方はかなり我流です。集合の例も含め。

 さて、{りんご、みかん、バナナ}という3つの要素をもつ集合Nがあるとき、Nの部分集合は、

   Φ
   {りんご}、{みかん}、{バナナ}
   {りんご,みかん}、{りんご,バナナ}、{みかん,バナナ}
   {りんご、みかん、バナナ}

の8個となります。この8個という数字は、2^3=2×2×2=8という計算で求められます。

 また、それぞれの部分集合について、りんごが入っているかどうか、みかんが入っているかどうか、バナナが入っているかどうかで分けると、次のような樹形図がかけます。



 「あり」「なし」のかわりに、○と×を使った表でも考えることができそうです。



 
 ○を1に、×を0にかえてみます。



 このなかの{りんご,バナナ}に注目します。これは、{りんご,みかん,バナナ}という集合Nの部分集合の1つですが、Nとは別にあらたに1と0からなる集合M{1,0}を考えると、{りんご,バナナ}という部分集合を考えることは、集合N{りんご,みかん,バナナ}の各要素から集合M{1,0}への各要素への次のような対応を考えることと同じになります。


     

 すべての部分集合について、このような要素間の対応を考えることができます。そして、この要素間の対応を集合Nから集合Mへの関数とよぶならば、集合Nの部分集合はどれもNからMへの1つの関数として表すことができます。このような関数を特性関数というらしいのです。いまは集合Nの要素が3つだから、部分集合は8個であり、特性関数も8個あることになります。

 特性関数で使われる記号χはエックスじゃなくてカイだと思うのですが(いまだよくわからず)、特性関数も関数ならばf(x)とおいていいように思うので、ここではあえてf(x)と表すことにします。このかっこの中のxはエックスです。xにあてはまるのが集合Nの要素、つまり、りんご、みかん、バナナ。

 さらに、表の中の部分集合に上から順に、ア〜クの記号をあてはめて、それぞれの特性関数をf(x)、f(x)、・・・、f(x)というふうに表すことにすれば、部分集合ウ{りんご,バナナ}を示す特性関数はf(x)なので、f(りんご)=1、f(みかん)=0、f(バナナ)=1となります。部分集合オ{みかん,バナナ}の場合は、f(りんご)=0、f(みかん)=1、f(バナナ)=1となります。

(つづく)
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遠山啓『量とはなにか−供戮sieveが出ていたなんて

 先日のエントリのなかで、クラインの名前を少し出しましたが、「クラインを批判したことからもわかるように」というような書き方をしたのが自分で気になって(何かが不正確な気がして)、あとで「クラインを批判したくだりからもわかるように」と変えたのですが、それでもやっぱり気になって、該当部分の『量とはなにか−供p227を読み直していました。

 で、「“くだりからもわかるように”なら許容範囲かなぁ」と思いつつ、関数のあれこれを考えたくて先を読み進んでいたら、特性関数の説明のところに入りました。で、さらに読んでいたら、sieveの文字が・・・! sieveってあれですよね、郡司ペギオ‐幸夫がいうところのジーブ。もともとは、マルコポーロさんの論文に出てきた言葉のはず。sieveって圏論の用語というわけではなかったのね。ちなみに「ふるい」という用語のかっこ書きとして出てきています。でも、マルコポーロさんがいうところのsieveとはちょっと(だいぶ?)イメージが違います。どちらかというと、エラトステネスの篩とか、そっち方向のまさに“ふるい”のイメージ。

 この一連の文章には「関数教育の現代化のために」(1964年)というタイトルがついており、小見出しは次のようになっています。

 ● クラインの数学教育
 ● クラインの改造プログラムの限界
 ● 対応・写像・変換・操作としての関数
 ● 関数のシェーマとしての“暗箱”
 ● 暗箱の式表現と関数記号
 ● 暗箱による合成と逆転
 ● 関数の分類
 ● 有限集合を有限集合にうつす関数
 ● 部分集合と特性関数
 ● “ふるい”の方法
 
 「ふるい」に特に意味があるというよりは、関数のあれこれを語るなかで出てきた、というふうに読めます。たしかに特性関数といわれると、これまでの(変量を扱う)関数とずいぶん雰囲気が違ってきます。

 で、遠山啓の説明を読みながら、この機会にもう一度特性関数とはなんぞや、について考えてみることにしました。

(つづく)
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