TETRA'S MATH

数学と数学教育

2011年4月に書いた、量子力学のエントリについて

 2011年4月に、量子力学に関するエントリをいくつか書きました。そのなかのひとつ、量子力学/ボーアの原子モデル(1)に対して、2014年9月に以下のようなご指摘を Twitter でいただいておりました。↓
https://twitter.com/sunchanuiguru/status/512979129499525120

 9月の段階では、何度か Twitter でやりとりをさせていただいたのち、該当エントリにコメントをつけて一区切りとしたのですが、どういうわけだか12月下旬から急に気になりだしたので、追加エントリで補足させていただくことにします。

 まずお伝えしたいのは、『なるほど量子力学機戞並湿絏躾傭/海鳴社/2006年)において、Enにマイナスをつけたことに対し、確かに「発想の転換」という言葉はあるものの、“「低い」から「深い」への転換を行ったのだと思います”というのは私の表現であり、海のたとえも私のイメージだということです。

 「行ったのだと思います」ではなく、「私はこのようにイメージして理解した」と書くべきところでした。

 いずれにせよここでいう「発想の転換」は、Twitterでご指摘をいただいたように、特別なことではなく、あたりまえといえばあたりまえのことなのかもしれません。少なくとも、古典力学にはなかった量子力学ならではの「発想の転換」ではないのでしょう。

 実際、本でも、上記の意味での「発想の転換」についてはさらっと書いてあるだけで、ボーアが立てた「大胆な仮説」については、それよりも前の部分に書いてあります。
 ボーア(Bohr)は、ラザフォードの原子モデルと古典論の間にある矛盾を取り除くために、プランクやアインシュタインの量子論を使って説明できないかと思い立った。
 ここで、ボーアは大胆な仮説をたてる。そもそもラザフォードの原子モデルが破綻するのは、荷電粒子である電子が原子核のまわりを等速円運動すると電磁波を放出して、そのエネルギーを失ってしまうことにある。そこで、ボーアは、ある特定の軌道を電子がまわっている時には、円運動を行っても電磁波を放出しないと仮定した。
 そして、電磁波を放出しない軌道のみが安定な軌道としたのである。(後略)
(p.70〜71)

 私自身、先の「発想の転換」を量子力学の核心的なものだとは思っていませんが、あたりまえのことと思うほど馴染みもなかったので、あのようなイメージを用いて理解したそのプロセスを書いたのでした。ちなみにマイナスがつくこと自体に抵抗はありません。

 ところで、実はこの件に関して、村上雅人先生に直接メールで問い合わせさせていただきました。村上先生はとても丁寧な内容のお返事を何度もくださって、わかりやすく説明してくださいました。助手の先生にも大変お世話になりました。

 その内容すべてを理解したとは言えない状態ではありますが、以前よりも「ポテンシャル」という言葉が怖くなくなったのは確かです。そして、怖さが減ったのと同時に、ポテンシャルというのは奥が深く、まだまだ分からないことが多い分野であることを認識するにいたりました。

 このような機会をあたえてくださった鰹節猫吉さん、積分定数さん、そして、村上先生、助手の先生に、この場をかりて深くお礼申し上げます。

 今回は量子力学についてでしたが、その他の本についても、ブログで何か書くときには、引用部分のほかは、著者の言葉を使わせていただきながらも、自分の言葉やイメージを加え、私の表現で私の理解の道筋を書いていますので、本の内容に興味・疑問をもたれた場合は、ぜひ、原典をあたってみていただければと思っております。

 最近、noteにかける時間が増えてブログの更新が減っておりました。また少しずつエントリを書いていきたいと思っていますので、今年もどうぞよろしくお願い申し上げます!
量子力学 | permalink

作用する行列・作用するベクトル

 行列の1次変換の有名な実践に「小沢猫」があります。1975年頃に小沢健一先生が発案されたものです。

tomodak先生のページ↓
http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~tomodak/
grapes/resource/bin/LinearMap.pdf


 1つの点(xとyの組)を、1つの行列を使って移動させることで、猫ちゃんがいろいろな形、いろいろな向きに変換されます。

しもまっち先生のページ↓
http://www5b.biglobe.ne.jp/~simomac/
grimg/grp18.htm


 このときの行列は、“はたらきかけるもの”という感じがします。

 つまり、上記の行列は、拡張された「帰一法」で確認したベクトルの Y=AX という式のAにあたるものにも見えてきます。
 
 一方、お会計不透明カフェでは、不透明な単価の組に、ひとつだけ「1」を要素としてもつ縦長ベクトルをうしろからかけてやることで、それぞれの単価を知ることができました。その縦長ベクトルを組み合わせてつくったのが単位行列ですが、この単位行列はもとの行列をそっくりそのまま再現することができます。

 また、1と0の縦長ベクトルの組み合わせをかえると、はたらきかけて1列目と3列目を入れ替える行列や、全部2列目だけにしてしまう行列もできます。

  

 上記のような1と0で構成された行列は、どの行列に対しても同じ作用を起こしますが、1つの行列に対して、その行列だけに意味ある作用を起こす行列もあります。

 たとえば、逆行列。うしろからかけても、前からかけても、単位行列にすることができます。

  

 先日、ベクトルの計算について「レストランの会計」と「お会計不透明カフェ」で考えましたが、カフェの場合についてお店とグループをそれぞれ4種類にふやすと、次のような行列の計算になります。4つのお店のコーヒー、ミルクティー、ジュース、アイスクリームの単価と、4つのグループが注文した数から、それぞれの場合の合計金額を計算して並べたものです。

  

 このうち、A店でグループEが注文したときのお会計を抜き出すと、次のようになります。

  

 A店の単価の組はベクトルであり、グループEの注文数の組もベクトルですが、合計金額はベクトルではなく量です。こういうふうにベクトルと量を区別するときの「量」はスカラーとよばれているようです。

 上記の計算の答えの行列は、いわば16この内積が並んでいるようなものですが、並んでいるので、全体としては量ではなく、行列です。この行列から、1つの量を抜き出すにはどうしたらいいか?  というわけで、C店でグループFが注文したときのお会計1620円を取り出す方法について考えます。ただし、4つのお店の単価表としての行列は動かせません。ここから横長の行ベクトルを抜き出すことなく、1620円を取り出す方法について考えます。

  

 まず、いまはグループFしか考えなくていいので、かける行列をグループFのみの列ベクトルにかえます。

 
  


 こうして、合計金額が4つに減らせましたが、まだこれはベクトルです。なので、いま出た答えに行列に、今度は左から(0 0 1 0)をかけます。

  


 こうすると、1620円という1つの金額としての量が取り出せます。以上の作業を1つの式にまとめると、次のようになります。

  


 あるいは、先にC店でのお会計にしぼったあとに、グループFの金額だけを抜き出す方法もありそうです。

 この計算は、1つの行列の左右からベクトルをかけることによって、行列の中から量を抜き出す作業になっています。いってみればこれは、行列から量を抜き出す「ベクトルの作用」です。

 行列力学における状態ベクトル、およびブラケット記法は、つまりはこういうベクトルの作用の話なのだろうと、現段階の私は理解しています。
量子力学 | permalink

量子力学の勉強で、いま現在わからないところ

 行列力学の誕生に関わる、ハイゼンベルクのあの式が、いまならわかるかもしれないと書きましたが(>こんな形で量子力学にもどってくるなんて・・・ )・・・やっぱりわからないです。

 たぶん、まずは、フーリエ級数をもっと理解しないとだめなんだろうと感じています。

 いや、フーリエ級数はなんとなくわかるのです。フーリエ級数と電磁波の関係がわからない。

 いま現在のおもな参考文献は、村上雅人『なるほど量子力学機戮覆里任垢、このなかのp87の欄外注釈4で行き詰まっています。

 古典論による電子の運動の解析について書かれてあるところで、最初に、

       Q(n,k)exp{i2πν(n,k)t}

という式が出てきます。なお、これを角速度ωを使って表しなおした

       Q(n,k)exp{iω(n,k)t}

という式も示されています。

 この式がどのあたりからきているのかまったく察しがつかないわけではないのですが、「これこれこういうことをしなければならないので、n軌道にあり、k回だけ振動する波(第k高調波)を、こういう式と置いてみる」というふうに出されている、その「波を・・・置いてみる」という表現にひっかかっています。波の「何を」そう置いているのか。なぜ、そう「置いてみる」ことができるのか。実際、p93では「定義」として出てくるし。

 そうして話は進み、Σのついた式になって、次のような欄外注釈がついているのですが、

古典論によれば、ωで振動している電子からは、その整数倍の振動数の電磁波が放出されることが知られている。よって、フーリエ級数となる。


 この話の流れが、どうしてもわからないのです。「知られている」にもひっかかってしまう。できた式がフーリエ級数だということに納得できないわけではなく、話の流れがしっくりこない。何かが気持ちわるい。なんなんだろう?

 なお、このあとの章は古典論から量子論への「対応原理」の話で、ハイゼンベルクの導入した式のある値が基本振動数の整数倍になっていないから、フーリエ級数になっていなくて、このままでは対応原理が成立しないことになってしまう・・・と続きます。ここまでくると、なんとなくわかる。

 いまわからないことをわかるには、どうすればいいのだろう・・・ まずは、上記の注釈の意味を理解しないといけないのだろう。

量子力学 | permalink

基底状態・励起状態と、ガンマ崩壊について

 ボーアの原子モデル(1)(2)の意味はわかってきたのですが、そもそも水素は「すいへーりーべ・・・」のいちばん最初であり、原子番号は1であり、陽子が1個だから電子も1個で、それは電子殻のいちばん内側の軌道にあるのではなかったか、なぜそれが別の軌道にも行けて、しかもそれが別の軌道に移ったりできるのだろう・・・??という素朴な疑問がわいてきます。

 で、水素の場合は、どうやら電子がいちばん内側の軌道にあるときが「基底状態」と言われるものであり、それ以外の場合が「励起状態」とよばれるものらしい、とようやくわかってきました。あの「すいへーりーべ・・・」の表は、それぞれの元素の基底状態の電子配置だったのですね。(ですか?)

 基底状態にあったのがなんらかのエネルギーをもらうと励起状態になり、励起状態から基底状態になるときに、エネルギーを放出する。ということなのかな?

  電気の歴史イラスト館励起状態

 あれ? ということは・・・

 ガンマ線も確か電磁波でした。しかも波長がかなり短い電磁波なので、ということは振動数が大きいということになり、大きなエネルギーをもつ電磁波ということになるのではなかろうか?

 少し前に放射性セシウムについて勉強したときに、セシウム‐137は、バリウム‐137mを経由してバリウム‐137になるということを知りました。そして、バリウム‐137mのように「m」がつくと、準安定同位体なるものを示すらしいということもわかりました。あれはおそらく、「すっかり安定しているわけではないけれど不安定ということでもない」という意味での「準安定」だったのですね。ということは、バリウム‐137mの電子の位置は、バリウム‐137とは少し異なっているのだろうか? 水素は電子1個だからいいけれど、バリウムともなると原子番号56、つまり電子は56個だから、バリウム‐137mではいったいだれがどの軌道にいるんでしょうか?? 

 ウィキペディアのバリウムの同位体によると、バリウム‐137mには2種類あって、バリウム‐137m1の励起エネルギーは661.659(3) keV、バリウム‐137m2の励起エネルギーは2349.1(4) keVとのこと。keV? また知らない単位が出てきたな・・・ そしてこのかっこ内の数字はなんだ? この励起エネルギーから振動数を出すと、それはガンマ線の振動数になるってことなのだろうか。

 とにもかくにも、セシウム‐137→バリウム137mのときには、中性子の数が変わり、陽子と電子の数が変わるので、元素そのものの種類が変わってしまうけれど、バリウム‐137m→バリウム‐137のときは、元素そのものの種類は同じで、準安定から安定にうつる、ということなのですね、きっと。ということは、ヨウ素‐131もベータ線(電子)を出してキセノン‐131に変わるだけではなくて、キセノンの準安定同位体を経由して、そこから安定同位体にうつるときにガンマ線を出すのかしらん? だから、放射性ヨウ素や放射性セシウムがあると、ベータ線もガンマ線も出るのかな? だとすると、なぜ放射性ストロンチウムはガンマ線をほとんど出さないのだろうか・・・

 あと、ベータ崩壊は、原子核の中性子が陽子と電子に分かれて、その電子が軌道にのっちゃうのですよね? これまでの流れで考えると、それはむしろ、エネルギーを吸収する動きに思えるのだけど・・・ 軌道間の遷移ではなく、原子核から生じた電子では、まったく状況がかわってしまうのだろうか? そういえばBARAKEN<原子と放射能>ページ5に、
電子といえば、原子核の周りを回っている電子もあります。この電子に比べると、中性子の分解で出来た電子は桁外れに大きなエネルギーを持っています。それで、この電子が人体に当たると様々な障害を引き起こすのです。

と書いてありましたが・・・(

量子力学 | permalink

訂正>ボーアの原子モデル(1)

 量子力学/ボーアの原子モデル(1)において、

 振動数νにプランク定数hをかけると電子のエネルギーになるのだから、上記の式の両辺にhをかけてやると、次のように式変形することができます。
と書きましたが(訂正済)、この段階で「電子のエネルギー」と書くのはおかしいと気づきました。ここは「光のエネルギー」と書くべきでした。
量子力学 | permalink

量子力学/ボーアの原子モデル(2)

 ボーアの原子モデル(1) で書いた内容を図にまとめると、次のようになります。この図の参考文献は、村上雅人『なるほど量子力学機p71,72です。




 以上のことをふまえて、水素原子から発せられる4色の可視光線について図にまとめると、次のようになります。この図のおもな参考サイトは、FNの高校物理ボーアの水素原子モデル(1913年)です。

 


 本当にそうなのか、振動数でざっくりと計算しておきます。有効数字の考え方がよくわからないので、とにかくおおまかに計算します。なお、この計算に参考文献はなく、私の理解の上での計算なので、とんちんかんなことやってたらごめんなさい。
続きを読む >>
量子力学 | permalink

量子力学/ボーアの原子モデル(1)

 そんなこんなで、バルマーとリュードベリは、水素原子から出てくる光の振動数の公式を導き出したわけですが、それは次のようなものでした。(より正確には、おそらくバルマーの式はこのまんまの形ではなかったのだろうと思います。なお、振動数の記号νは「ニュー」です↓)

 ・・・(1)

 可視光線の場合は、m=2を代入して、n=3,4,5,6を代入すると、4色の光の振動数になります。なお、いまは村上雅人『なるほど量子力学機戮鮖温擁幻イ砲靴討い襪里如▲Εキペディアのリュードベリ定数のページにある公式とはmとnが入れ替わっています。

 話はいったんかわって。

 光のエネルギーは振動数に比例するそうで、比例定数をhとすると、E=hνと表されるようです(ブログ本文中のフォントでは「ν(ニュー)」と「v(ヴィ)」の見た目が同じですが、しばらくの間、vは振動数「ニュー」を表すものとします)。比例定数hにはプランク定数という名前がついています。

 振動数νにプランク定数hをかけると光のエネルギーになるのだから、上記の式の両辺にhをかけてやると、次のように式変形することができます。(訂正

・・・(2)

 hνは光のエネルギーを表しているのだから、赤枠と青枠をそれぞれ1つのエネルギーと考えれば、光のエネルギーはなんらかの2つのエネルギーの差と考えてもわるいことはなさそうです。というわけで、赤枠、青枠の位置にくるエネルギーの一般式は次のように表すことができます。

       ・・・(3)

 この式はある軌道にある電子のエネルギーを表していて、このようなエネルギーを有する軌道が安定した軌道であり、これらの軌道間を電子が遷移するときに、そのエネルギーの差に相当する電磁波が放出されるのではないか・・・

 という仮説をたてたのがボーアでした。

 しかし、上記(3)の式のままでは矛盾が生じます。ボーアは、原子核が近いほどnが小さいと考えていましたが、(3)の式ではnが小さいほどエネルギーが大きくなって、原子核の近くをまわっている電子のエネルギーが最も大きくなってしまいます。と、さらっと書いてしまいましたが、この矛盾について私はなかなか理解できませんでした。でも、それが理解できなかったおかげで、基底状態や励起状態というものの意味がちょっとだけわかるようになりました。それについてはいずれまた。

 で、ボーアは、上記の式にマイナスをつけるという発想の転換を行いました。

       ・・・(4)

 「低い」から「深い」への転換を行ったのだと思います。イメージでいうならば、海底を0として海底からの高さを示すのではなく、海面を0として海面からの深さをマイナスで表す・・・というような感じでしょうか。海面はいわば電子が原子核からのがれた自由な状態を表し、実際、(3)の式においてn→∞とすると、En=0となります。このようにマイナスをつけても、リュードべリの公式とは矛盾しません。
[2014年9月20日追記]「低い」から「深い」の転換を行ったわけではないということをTwitterで丁寧に教えていただきました。 https://twitter.com/sunchanuiguru/status/512979129499525120
[2015年1月8日 補足記事を書きました]↓
2011年4月に書いた、量子力学のエントリについて



・・・(5)

 いま、n>mなのだから、nが小さいほど原子核に近いとすれば、原子核から遠いほうの軌道から近いほうの軌道に移るときのエネルギーの差はEn−Emとなり、各エネルギーの一般式をマイナスをつけて表すことで、最後の差の式のmとnの前後関係が入れ替わって辻褄があうのが面白いです。
量子力学 | permalink

量子力学/バルマーとリュードベリの目のつけどころ

 電磁波には、可視光線、ガンマ線、X線、紫外線、赤外線、電波などがあるそうです。このうち人間の目で感じられる電磁波が可視光線であり、380〜750nmの光のなかに私たちはいろいろな色を見出しているということなのでしょう。なお、nm(ナノメートル)=10億分の1メートル(10^−9メートル)です。

 電磁波と光ついては、次のページがわかりやすくまとめてあります。(Illustrator講座のサイトにこれだけ詳しく書いてあることにびっくり)

 adobe Illustrator イライラ・ストレス解消委員会
 
光とカラー

 かつて、バルマーの公式というものに驚いたことがありました。バルマーは水素原子から発せられる4つの可視光線(赤、青、藍、紫)の振動数を1つの公式で表すということをやってのけました。

 あのころ、「スペクトル」の意味さえわからなかった私ですが、ようやくあの細長い長方形に粗いバーコードのように縦線が入っている図の意味がわかってきました。つまり、何かから発せられる光のなかにどんな波長の光が含まれているかを、分解して波長ごとに線で表したものなのですね・・・と、いろいろなページで何度も説明してもらっているのですが、わからないときにはわからないものであり。

 水素原子のスペクトルについては、こちらのサイト内にきれいな画像があります。↓

 元大学教員の web site水素原子のスペクトル

 この画像だと、赤、水色、紫、藍色と言いたくなりますね。およその波長は左から、656nm(赤)、486nm(青)、434nm(藍)、410nm(紫)とのこと。こんなふうに分解してやると、水素原子から発せられる光の中に、この4つの波長の光が含まれているということがわかる・・・というわけか。
 
 波長というのは波の長さ、波が上にいって下にいってまたもどってくるまでの1サイクルの距離のことであり、その波の状態(種類・特徴)を表すひとつの指標になるのだと思います。また、上にいって下にいってまたもどってくる1サイクルの動きが単位時間内に何回繰り返されるかというのが振動数(周波数)であり、その単位がおなじみのHz(ヘルツ)ということなのでしょう。さらにいえば、その波の高さ=振幅が指標となることもあるのだと思います。

 分解した光を「波長」によって分けて示したいのであれば、長方形の横軸に波長をとったスペクトルができるのだろうし、「振動数」によって分けて示したいのであれば、長方形の横軸に振動数をとったスペクトルができるということなのでしょう。

 バルマーは水素原子から出る光のスペクトルの規則性を見つけたのですが、バルマーの公式に出会ったリュードベリは、水素原子だけではなく、他の原子についても同様の公式が成立することを見出し、そこにあらわれる定数が原子の種類に関係なく普遍となることを発見しました(リュードベリ定数)。

 ニールス・ボーア論文集2『量子力学の誕生』によると、
 この分野でリュードベリが大きな成果を挙げるにあたっては,スペクトル線の直接に測定される波長のあいだの関係ではなく,その逆数,つまり現在では波数として知られている単位長さあたりの波の数のあいだの関係を始めから追究したことは,幸運な直感でした。
とのこと。なお、逆数に目をつけたのには、それなりの理由があったようです。

 バルマーが波長をもとにしてどんなふうに公式を導き出したかについては、次のページのいちばん下にプロセスが示してあり、大変面白いです。小数で表された波長の比率を分数で表し、そこから共通して成り立つ式を見つけたようです。

 FNの高校物理ボーアの水素原子モデル(1913年)
量子力学 | permalink

言葉遊びでブラケット

 確か「エルミート行列」を検索してたころだと思いますが、ブラ・ベクトル、ケット・ベクトル、ふたつあわせてブラケットというお笑いコンビのようなベクトルの話をあっちこっちで見かけて、なんだか難しそうな話だなぁ、と思いながら素通りしていました。きっと自分には関係のないことだろうと、理解しようともしなかった。

 でも、『なるほど量子力学』のなかの説明を読んでいたら、ああ、そういうことなのか、と少しわかってきた感じです。ちなみに考案者はディラックさん。

 で、ブラ・ケット記法の前段階の「行列から情報を取り出す操作」について、言葉遊びをしてみることにしました。物理的な意味はもちろん数学的な意味もない、ただのお遊びです。×0は消す、×1は残す、「たし算」は「文字をつなぐ」という約束にして、次の行列を考えてみます。

  

 この行列の右から列ベクトル(1 1 1)をかけてやると、

  

となり、列ベクトル(ちから うまい うどん)ができます。でも、このままでは最初の行列と最後の列ベクトルの区別がつきにくいので、もうバラバラにできないという意味をこめて、いちばん最後の列ベクトルの成分を漢字で表すことにします。

  

 今度はこれに、左から行ベクトル(1 0 1)をかけてやります。

  

 力饂飩ができました(「力」はともかく「饂飩」は平仮名のほうがおいしそうなんだけどな・・・)。なお、(1 0 1)ではなく(0 1 1)をかけてやると「旨い饂飩」ができます。

 次は、最初の行列に、右から列ベクトル(0 1 0)をかけてみます。

  

 そう、「かまど」が取り出したいんだけど、まだ部品だけで合体していないので、左から行ベクトル(1 1 1)をかけて、

  

 竃が出てきました。

 今度は次のような行列を考えてみます。

  

 まず、右から列ベクトル(1 1 0)をかけて、

  

 次に、左から行ベクトル(1 1 0)をかけて、

  

 これらの操作をまとめて次のように書くことにします。

  

 同じように、右から列ベクトル(0 1 1)、左から行ベクトル(0 1 1)をかけてやると、

  

 きしめんになります。

 では、右から列ベクトル(1 0 1)、左から行ベクトル(1 0 1)をかけてやると、何が出てくるでしょうか?

  

 答えは白文字になっています→ たくあん

(わたしはおなかがすいているんだろうか?)

 今回の場合、列ベクトルと行ベクトルの数字は同じ並びになっています。縦に並んでいるか、横に並んでいるかの違いで。こういうふうに、同じ数字の並びを縦から横へ変えることは、一種の転置と考えてよさそうです。

 で、複素数で考えるときには、転置のみならず複素共役を考えることになるそうです。たとえば右からかける列ベクトルを(1 i 1−i)とすると、左からかける行ベクトルは(1 −i 1+i)という具合に。このとき、右からかける列ベクトルを |> という記号で表して、これがケットベクトル、左からかける行ベクトルを <| という記号で表して、これがブラベクトル、2つをあわせると <|> となってかっこが閉じるので、ブラケットということのようです(この洒落はホントの話)。かっこが閉じたときに取り出されるものはベクトルではなくスカラーになっています。

 右、左からベクトルをかけてこういう操作をすることは、行列というただの文字の並びから「饂飩」や「竃」や「たこやき」などの単語を引き出すこと ―― 行列力学でいうならば「物理量」を取り出すこと ―― になるのでしょう。……なるのかな??


〔2018年3月24日追記〕

 分けて書いていた記事をひとつにまとめ、整理しました。
量子力学 | permalink

プランクにヒントを与えた無限等比級数

 量子力学の入門本を開くと、まず「空洞放射」の話が出てきます。でも、最初から丁寧に理解しようとするとなかなか先に進めない……。「黒体ってなに?」「エネルギースペクトルってなに?」「ピークが高振動数側にシフトするってどういうこと?」という具合に。

 で、何かとっかかりはないかなぁ、と思ってページをめくっていたら、無限等比級数の式が出てきました。

  

 ここから空洞放射に切り込めました。よかった。

 さて、空洞放射についての実験結果のグラフ(横軸:振動数、縦軸:エネルギー)は、右側に裾野が広がる山のような形になっています。

 で、古典論の法則に基づいた式(レーリー-ジーンズの法則)でグラフをかくと、エネルギーは2次関数的に増えていくので、振動数が小さいところでは重なるのだけれど、実験結果の山の頂上少し前からはなれていって、あとはものすごーく離れてしまうことになります。

 これに対してウィーンは、古典粒子が熱平衡にあるときに従う「ボルツマン分布」というものをもとにして式を補正し、その結果、山型になって山頂から裾野にかけてはよく重なるグラフができました。でも、今度は振動数が小さいところでどうしてもあわさらない。

 実験結果とぴったり重なるような式はどうしたら得られるのだろう? 振動数が小さいときにはレーリー-ジーンスの式になり、大きいときにはウィーンの式になるようにすればいいのだけれど……。

 そんなグラフの式を見つけたのはプランクさん。ウィーンの式に「−1」を加えるだけで、実験結果とぴったり重なる式ができちゃったそうなのです。

  


 空洞放射の実験結果と

  ・振動数が低い部分でのみ重なる「レーリー-ジーンズの式」
  ・振動数が高い部分でのみ重なる「ウィーンの式」
  ・全体と重なる「プランクの式」

を見比べてみます。

  
  (『なるほど量子力学機拌湿絏躾傭より)

 どこが違うかというと、緑・黄色・ピンクの部分です。

 vが大きくなると黄色とピンクをほぼイコールで考えていいことは納得できます。

 でも、どのくらい大きいんだろう?

 もともと空洞放射の実験は、鉄を熱したときに、だんだん赤くなってそのうち白っぽくなっていくことを古典論では説明できないことから始まっていると思うので、可視光線の周波数を考えればいいんでしょうか? 3×(10^13)Hzくらいだそうです。だとすると、確かに十分大きい。1をひいてもほとんど影響はなさそう。

 では、振動数が低いほうについてはどうなんだろう? vが小さくなると、緑とピンクは近づいていくはずなのですが。で、ここで登場するのが指数関数の級数展開。

  

 xが小さい場合、後半はほとんど考えに入れなくていいので、2次以降の項を消してみます。(なぜ2次なのか、その目安はなんなのだ?とつっこみたい気分ですが、とりあえずおいておいて)

  

 これに x=hv/kT を代入してみると、

  

なので、プランクの式のピンクの部分はレーリー-ジーンズの式の緑の部分と同じになります。

  

 なるほど〜!

 プランクは次のような無限等比級数をもとにウィーンの式と自分の式との違いを吟味し、ある重要な結論に達したのだそうです。(by『なるほど量子力学機拌湿絏躾傭

  

 その結論というのは「空洞に閉じ込められた光のエネルギーは連続ではなくとびとびになっている」というものです。

 で、『なるほど量子力学機戮任蓮⊃尭或νの光のエネルギーを E=hν とし、光がとることのできるエネルギーはこの整数倍しか許されないと考え、そこからずーっと計算をしていってプランクの式までもってきています。

 という仮定を、プランクはどうやって見出したのだろう?

 で、プランクさんがどう考えたのかはわからないけれど、自分としてはプランクの式から無限等比級数に達してみたかったので、テキストに書かれてある式を逆にたどってみながらアレコレ考えていたのです。

 が、そこでハタと気づけば、hというのはプランク定数。すでにウィーンの式に入っています。これはどういうことなのだ?

 と思いきや、検索して見つけられるページでは、どれもウィーンの式にプランク定数hは出てきません。

 というか、E=hν の中のプランク定数hは結論だったんじゃなかったっけかな? そこから量子力学が生まれていったのではなかったかな・・・? 『なるほど量子力学機戮hが先に出てきているのは、話をわかりやすくするため、ウィーンの式とプランクの式の違いをわかりやすくするなんでしょうか。(補遺にボルツマン分布のことが詳しく載っているので、それをちゃんと読めばわかるのかもしれません。)

 「プランクの式」と「無限等比級数」と「エネルギーの整数倍」と「プランク定数」……これらはいったいどういう順番で展開されていったのか興味がありますが、そのためにはもっといろいろ本を読まなくちゃいけないようです。なお、ウィーンの式の段階で「光は粒子である」という仮定はすでに立てられていて、そうすることでウィーンの式は生まれたらしいです。

 プランクは、「光のエネルギーは連続ではなくとびとびの値しかとれない」ということから、すぐに「光は粒子である」という結論は出さなかったようです。いずれ古典論で解明できるだろうと期待していたのだとか。

 そして、プランクの式を見て、光は波ではなく粒子であるという提案をしたのがアインシュタインさんでした。

 実験結果にあう式を導き出すための計算上の便宜から生まれた仮定が、物理を大きく変えることになったのだなぁ、と感じています(そういう認識でいいの?)。というか、ひょっとすると物理ってそういうこと?


【余談】振動数を表す記号はブイではなくギリシャ語のニューだということ知りました。あちゃー。これまで全部ブイにしてきちゃったよ。そういえばブイは速さで使うことが多いもんなぁ。テキストはすぐ書きかえられるけど、数式の画像を全部書き換えるのは大変だなぁ。  でも、このブログのフォントだと・・・      ブイは v      ニューは ν  おんなじやん!?
〔2018年3月24日追記〕

 複数に分けて書いていた記事をひとつにまとめ、整理しました。

量子力学 | permalink
  

| 1/2PAGES | >>
サイト内検索