TETRA'S MATH

数学と数学教育

古代エジプトの分数・15

 「THE RHIND 2/n TABLE」では2つの公式が示されており、これでほとんどの場合が説明できるのですが、n=35、91の場合は例外で〔公式1〕も〔公式2〕も使われていない、というようなことが書かれてあります。(n=95も例外であると書かれていますが、これは2/19の両辺を5でわった式と一致するので、2/95は〔公式2〕系統の式として構わないのではないかと思います。)

 ここで再び、『数学の黎明』にもどります。

 n=35 の場合は、35が5(または7)の倍数であることを利用して、2/5(または2/7)を利用すればよさそうなもんですが、実際には次のような計算になっているそうです。

 2は35のいかなる部分か。/30は1+/6、/42は//3+/6である。
    6              7         5   
 
   35の1個分は 35
   35の/30は 1+/6 ←
   35の/42は //3+/6 ←

   よって、2:35=/30+/42

 「6 7 5」というのは補助数で(>「古代エジプトの分数・10」)、3つの数字は「35、/30、/42」にそれぞれ対応しています。現代風に考えると、35、30、42の最小公倍数は210なので、「6/210、7/210、5/210」と通分してみれば、さきほどの「6 7 5」が分子に現れてきます。つまり、2/35=12/210=7/210+5/210=1/30+1/42 となり、2:35=/30+/42 と一致します。

 実は『数学の黎明』ではここから補助数の話が始まっており、私の説明は順番が逆になってしまっているのですが、「分数の1に対する補助算」()の中での補助数の意味はわかったけれど、2:35の「6 7 5」がどこからきたのかいまひとつ理解できずにいるのでした。それぞれ「35、/30、/42」の下に書かれてあるようなので、この3つの数と対応していることは確かなようです。

 もうひとつプロセスがわからないものとして、2:91=/70+/130 があります。91=7×13 が関わっているのかなぁ、と思ったのですが、古代エジプト式らしいプロセスを見つけることができていません。この2つが「THE RHIND 2/n TABLE」の2つの公式にあてはまらない例外であるというのも、なんだかうなずけます。2:35 にしろ、2:91 にしろ、よくこんなシンプルな分解方法が見つかったなぁ、としみじみ思うのでした。

 長々と古代エジプトの分数について書いていきましたが、ここでとりあえず一区切りとします。
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古代エジプトの分数・14

ひき続き、次のwebページをみていきます。

   THE RHIND 2/n TABLE

 下記の〔公式2〕の意味は少しわかってきましたが、aを見つけるのがなかなか大変です。関連ページを丁寧に読んでいけば、どこかに書いてあるのでしょうか。

 

 たとえば、q=29 のとき、2a−q が2以上の整数となるためには、a≧16 でなくてはならず、かつ、2a−q がaの約数の和になるようにしなくてはなりません。a=16 としてみると、2a−q=2×16−29=3で、3=2+1 より、2:29=1/16+2/(16×29)+1/(16×29)=1/16+1/232+1/464 となります。がしかし、(2:n)表の答えとは一致しません。実際の答えは /24+/58+/174+/232 であり、これは a=24、2a−q=19、19=12+4+3 から導くことができます。

     

 先のwebページにもこの計算が載っていますが、結果から導くのは容易だけれど、何もないところからaの値を導くのはなかなか大変です。

 では、『数学の黎明』で学んだエジプト式計算で導くとどんな感じになるのか自分でやってみました。これもそれなりに大変ですが、一応、辻褄があうように、できるだけエジプト方式にのっとって(そのつもりで)がんばってみました。

   「2÷29」

   29の1倍は 29
   29の/3は 9+//3 → 9+/2+/6
   29の/24は 1+/8+/16+/48

   「/8+/16+/48 に加えて1となる数を見つける」

   1、8、16、48に対応する補助数は、48、6、3、1
   和→6+3+1=10  不足分→48−10=38

   「38÷48」

   48の1個分は 48
   48の//3は 32 ←
   48の/2は 24
   48の/4は 12
   48の/8は 6 ←

   よって答えは、//3 + /8 → /2+/6+/8


   もう一度はじめから、「2÷29」を計算すると、

   29の1倍は 29
   29の/3は 9+//3
        9+/2+/6
   29の/24は 1+/8+/16+/48 ←
 /2 29の/58は /2 ←
 /6 29の/174は /6 ←
 /8 29の/232は /8 ←

   よって、2:29= /24 + /58 + /174 + /232


 われながらエジプト式計算にずいぶん慣れてきたなぁ、と思うのですが、上の計算がどのくらいあっているのか見当もつきません。他のnについてもやってみましたが、辻褄をあわせるのに苦労する場合もけっこうあります。

(つづく)
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古代エジプトの分数・13

 ひき続き、次のwebページをみていきます。

   THE RHIND 2/n TABLE

 2番目の公式は次のようなものです。

     ……〔公式2〕

 この公式は、ちょっと理解に苦しみました。それぞれの場合について、aをどうやって見つけているかがよくわからないのです。最初の例は、2/13についてです。

     

 a=8 はどこからきたのだろう?と悩んだのですが、「since 3=2+1」とあるので、2a−q=3 からもってきたと考えていいのでしょうか。そうすることで、次のように式変形ができます。

     

 確かに(2:n)表と一致します。2a−q=1 から a=7 を導けば 2/17=1/7+1/91 ときれいにまとまりますが、これだと〔公式1〕をあてはめた場合と同じ結果になるので、2a−q=1 は考えに入れないのでしょう。2つの単位分数の和で表すときには〔公式1〕、3つ以上の単位分数の和で表すときには〔公式2〕を使う、と考えてもよさそうです。

 次の例は 2/17 です。

     

 この場合の a=12 は、2a−q=1+2+4=7 として見つけてあるんでしょうか・・・? 2a−q=7 の場合、次の2通りの式変形が考えられます。

     

     

 後者のほうが項数が少なくて分母も小さいので、(2:n)表では後者が選ばれている、ということのようです。

 そこでふと思ったのが 2:13 で 2a−q=7 を採用したらどうなるかということ。a=10 で、7=2+5 より、

     

 となります。これは(2:n)表にある /8 + /52 + /104 よりいい分解の仕方ではなかろうか…!?

 なにをもってして「よりよい分解」とするかはなかなかむずかしい話だと思いますが、少なくとも(2:n)表では上記のような分解方法はとられていません。エジプト式の計算では 29÷10 からはじまるわり算はなかったので、/10からはじまる単位分数の和になることもなかったのでしょう。

(つづく)
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古代エジプトの分数・12

 少し前に、古代エジプト分数について、次のwebページのご紹介をいただきました。ニューヨーク州立バッファロー大学内のページのようです。

   Egyptian Fractions   THE RHIND 2/n TABLE

 ここで示されている考え方は、『数学の黎明』の内容とは違っていて、(2:n)表について2つの公式が与えられています。

 まず、1つめは次のようなものです。

   ・・・・・・〔公式1〕

 この公式の前にもう1つ数式が示してあり、その式を見ていたら、下のような部分分数展開のことを思い出しました。

   

 一般式は次のようになります。

   

 これを 1/n=… に変形すれば、単位分数を別の単位分数の和で表す公式が作れます。

   

 たとえば、1/2 だとこんな感じです。

   

 1/5、1/7、1/11、1/23 の場合は次のようになります。

   

 それぞれ2倍してみると……

   

 リンド・パピスルの(2:n)表ときれいに一致しました。そして、いちばん最初の公式もとてもよく理解できます。

 結果的にこれは、「ようかん方式」を公式化したものといえそうです。(2:n)表の n はすべて奇数なので、2本のようかんを n 人で分けるとき、まず2本のようかんを何等分かして、全部で(n+1)ピースにする必要があります。全部で(n+1)ピースになるような分け方とは、1本を {(n+1)÷2} 等分する分け方です(例:5人で分けるときは6ピース必要だから、1本をそれぞれ3等分する)。そしてnピース配ったあと、残りの1本をn人で分ければよいので、2回目に最後に配るピースの大きさは、{(n+1)÷2÷n}となります(例:5人で分けるとき、1/3のようかんが1ピース残るので、それを5等分して1/15ずつ分ける)。そうして〔公式1〕が導かれます。

(つづく)
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古代エジプトの分数・11

 「分数の1に対する補足算」は、通分の分子計算のようなものだと書きましたが、次のような問題では、補助数に分数が含まれているようです。

 「 /4 + /8 + /10 + /30 + /45 の //3 に対する補足数は何か」

 そんなことになるまえになにか手立てはなかったのか?と逆に問い詰めたくなるお題だけど、とにかく考えてみます。補助数は次のようになっています。

  11 + /4    5+ /2 + /8    4+ /2    1+/2    1

 まず、問題に出てくる数を“通分”しますが、分母を公倍数ではなく45にそろえます。たとえば /4 について、分母が4であったものを45にするということは、分母も分子も 45÷4= 11+/4 (倍)することになります。こうして最初の補助数があらわれてきました。

 /8については自分で計算してみました。

   「45÷8」

   8の1個分は 8
   8の10個分は 80
   8の5個分は 40 ←
   8の/2は 4 ←
   8の/4は 2
   8の/8は 1 ←

   45=40+4+1 だから、答えは 5 + /2 + /8

 こうして順に考えていくと、補助数が全部求まります。で、補助数を全部たすと・・・

 (11 + /4) + (5+ /2 + /8) + (4+ /2) + (1+/2) + 1
=(11+5+4+1+1) + (/2 + /2 + /2) +  /4  +  /8
=23+ /2 + /4 + /8

 45の //3 は30で、分子があと 30−(23+ /2 + /4 + /8)=6+ /8  たりないから、(6+/8)÷45 を計算すると、商は /9 + /40 となり、これが答えです。と書けば簡単ですが、(6+/8)÷45 の計算はいったいどうすればいいのだろう??

   45の1個分は 45
   45の/9は 5 ←
   45の/10は 4+ /2
   45の/20は 2+ /4
   45の/40は 1+/8 ←
   
と計算したいのはやまやまですが、「45の/9は」というのはエジプト式ではないような気がするので、まちがっていそうです。//3からもっていくのだろうか?

   45の//3は 30
   45の/3 15
   45の/9 5

 これでいいのかな…? エジプト式計算にはだいぶ慣れきたつもりですが、まだまだわからないことが多いです。

 とりあえず補助数による計算をまとめると

「多少とも複雑な分数和を、別の同じような分数和と比較せねばらならぬとき、あるいはそれに何かを加えて1にせねばならぬとき、最小の分数が新しい単位として選ばれ、他の分数はすべてそれによって表現される」

ということになります。この補助数による計算はエジプトの計算方法の最高峰であり、仕上げの一筆なのだそうです。

 『数学の黎明』ではこのあと「アハ算法」の話に入っていきますが、とりあえず『数学の黎明』を参考とした古代エジプト分数の話はこれで一区切りとします。次に、ニューヨーク州立バッファロー大学(教育学部の中の数学科?)のサイトからわかった古代エジプト分数の考え方についてみていきたいと思います。

(つづく)
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古代エジプトの分数・10

 n=31 からは計算方法が変わっていて、これまでのような /2系列、//3系列の計算にはなっていません。たとえば、n=31の場合は、

  「/20 は 1+ /2 + /20、  /124 は /4、  /155 は /5 である。」

というような補足書きがあり、答えは /20 + /124 + /155 と示されています。

   31の1個分は 31
   31の/10は 3 + /10
   31の/20は 1 + /2 + /20

 ここまではいいけれど、このあと「 1 + /2 + /20 」に加えて2になるような数を求めなくてはいけません。どう考えればよいのだろう??

 そこで出てくるのが「分数の1に対する補足算」というものです。1つの分数にどんな数を加えたら1になるかという問題は、エジプト人の除法に繰り返し出てくる問題なのだそうです。

 たとえば、「//3 + /15 に何を加えれば1となるか?」という問題では、「10 1 和11 余り4」というふうにして、朱書きの補助数10と1があたえられているそうです。これを現代の通分で考えれば、2/3 + 1/15 = (10+1)/15 で、分子の和が11、全体を1にするには分子があと15−11=4 足りない、ということで、「4になるまで15でもって計算せよ」という問題に続きます。

   15の1個分は 15
   15の/10は 1+/2
   15の/5は 3 ←
   15の/15は 1 ←

   3+1=4 だから、答えは /5 + /15

 つまり、//3 + /15 に加えて1となるのは、/5 + /15 です。この考え方で先ほどの「 1 + /2 + /20 」に何を加えたら2になるかを求めてみます。/2 + /20 = (10+1)/20 より、分子の和が11、余り 20−11 =9 なので、

「9になるまで20でもって計算せよ」

   20の1個分は 20
   20の/4は 5 ←
   20の/5は 4 ←

   5+4=9 だから、答えは /4+/5

 補足書きの中の分数と一致しました。では、2:31を最初から計算してみると、

    31の1個分は 31
    31の/20は 1+/2+/20 ←
  4  31の/124は /4 ←
  5  31の/155は /5 ←

    よって、2:31= /20 + /124 + /155

となります。うまいことできているなぁ、理にかなっているなぁ、という言葉がつい浮かんでしまったのですが、果たしてこれは理にかなっているんだろうか!?

 しかし ここまで考えてきてしみじみ思うのですが、これまで、「分子が1ではないある分数(わり算の結果)を単位分数の和で表すこと」を「ようかん方式」で考え、古代エジプト分数の特徴と考えのように思ってきたけれど、それはどうも違うんじゃないかという気がしてきました。まずはとにかくしょっちゅう出てくる //3 にまいってしまいます。それに、「ようかん方式」で 2/31 = 1/20 + 1/124 + 1/155 にたどりつくには、いったいどんなふうに考えればよいのか見当がつきません。確かに、2/31 = 1/16 + 1/496 では「496」が大きすぎていい方法だとはいえない気がします。半減法で、2等分、4等分、8等分あたりで先が見えないようならば、10等分、20等分していこう、という発想があったのでしょうか。まわりくどい方法に思えるところも多々あるけれど、方法がシンプルであるよりも答えに合理性があるほうが大事なので、そのための臨機応変さと考えればよいのかもしれません。

(つづく)
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古代エジプトの分数・09

 古代エジプト分数には(2:n)表というものがあり、これは「/n の2倍を計算するには、2をnでわれ」という原理にもとづいて与えれているそうです。私たちの目からみれば、2/n と 2÷n は同じものなんだから、あらためてそういわれるとかえって「ん?」となってしまうのですが、エジプト人にとって、2をnでわることによって/nを2倍増するというのは、全く新しい着想であったようです。

 さて、(2:n)表には n=3 から n=101 までの奇数がすべて含まれているけれども、一度に全部できあがったものではなく、途中で区切りがあって、区切りごとに別々の計算方法で結果が出されています。

 たとえば、いちばん古い部分には分母が3でわりきれる分数が含まれていて、以下のように示されています。

   2:9= /6 + /18
   2:15= /10 + /30
   2:21= /14 + /42

 これは「古代エジプトの分数・06」で示した方法( /3 + /3 = /2 + /6 の両辺を3、5、7でわる)からきているものと思えばよいようです。

 n=5 以上の場合は、実際に 2÷n を計算していたらしいです。たとえばn=5のときは、

   5の1個分は 5
   5の//3は 3+/3
   5の/3は 1+//3 ←
   5の/15は /3 ←

   よって、2:5= /3 + /15

となります(ほんとに 2/3 が好きなんだなぁ)。なお、計算の助けとして、 「/3は1 + //3、  /15は/3である」 といった朱書きを含む補足メモのようなものがついているそうです。

 n≧7 の場合も同様に考えていけばいいのですが、//3 系列と /2 系列の場合があり、n=7、13のときだけ /2 系列で、あとの場合は //3 系列になっています。項数が少なく、分母が小さくなるように、系列が選ばれているようです。(ただし、この方法はn=29まで)

(つづく)
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古代エジプトの分数・08

 それにしてもしみじみ思うことは、古代エジプト人は 2/3 が好きだったんだなぁ、ということです。現代の私たちの目からみると不自然に見えるところでも 2/3 が出てきます。たとえば 16÷3 の場合、

   3の1個分は 3 ← 
   3の2個分は 6
   3の4個分は 12 ←
   3の//3は 2
   3の/3は 1 ←

   16=3+12+1 より、答えは 1+4+/3=5+/3

となっています。4行目で3の 1/3 を求めればよさそうなものですが、まず 2/3 を求めています。こういうところが、エジプトの計算家の特異性なんだそうです。

 また、7÷10 の答えは //3 + /30 なんだそうですが、『数学の黎明』に計算途中は示されていないので、自分でやってみると、

   10の1個分は 10
   10の//3は 6+//3 ←
   10の/10は 1
   10の/30は /3 ←

   7 = 6 + //3 + /3 より、答えは //3+/30

 これでいいんでしょうか。どう考えても2行目が不自然だと思うのですがが……。ふつうに考えると、

   10の1個分は 10
   10の/2は 5 ←
   10の/5は 2 ←
 
   7=2+5 より、答えは /2+/5

とすればいいと思うんですが。なお、8÷10、9÷10 の答えにも //3 が含まれています。不思議です。

(つづく)
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古代エジプトの分数・07

 自然分数以外の分数についての関係式はどうしていたかというと、「古代エジプトの分数・06」で示したような自然分数の式を変形することで得ていました。たとえば、(1)の式 /3 + /6 = /2 の両辺を 2、3、4、… でわると、

   /6 + /12 = /4
   /9 + /18 = /6
   /12 + /24 = /8
       ・
       ・
       ・

という式ができます。また、倍増については、分母が偶数であるものは分母を2でわればよいので簡単です。たとえば、/6 + /18 の2倍は /3 + /9 となります。では、分母が3の倍数のときにはどうするかというと、次の要領で計算していたようです。

 (3)の式 //3 = /2 + /6 より、 /3 + /3 = /2 + /6
 両辺を3でわって、 /9 + /9 = /6 + /18

 こうすれば、/9 + /9 の2倍は、/3 + /9 となります。
 だから、/9を倍増していく計算において、

   /9
   /9 + /9
   /9 + /9 + /9 + /9
   /9 + /9 + /9 + /9 + /9 + /9 + /9 + /9

とはせずに、

   /9
   /6 + /18
   /3+/9
   //3 + /6 + /18

とすることができます。このような計算をすることで、自然分数以外の単位分数が長々続くような式をさけることができます。

 それならばいっそ、上記のような式変形をするのではなくて、1/9 + 1/9 + 1/9 + 1/9 =4/9 のように表記を変える発想は生まれなかったのだろうか?という疑問がわいてくるわけですが、古代エジプト人は極端に保守的で、古くからの伝統を堅く守る人々だったそうなので、分数についての新しい表記の仕方は生まれてこなかったようです。倍増の計算の簡略化のみならず、1つの式で同じ分数が2個以上並ぶのを嫌ったのかなぁ、とも思えます。

 web上に数式を書くときに思うのですが、やはり1行に2つの文字が上下に並ぶ分数表現というのは、基本的に扱いにくいです。いろいろ方法はあるのでしょうが、結局わたしは画像貼り付けに落ち着きました。テキスト中に入れたいときにはスラッシュを付けますが、自分で書いていてもわかりにくいなぁ、と思います。割合分数の肩をもつわけでも量分数を否定するわけでもないけれど、2つの数で1つの数を表す分数というのは、便利ではあるけれど、難しいというか、扱いにくいというか、特別な感じがします。その点において、記号のある自然分数と、分子が1である(=分子を表現する必要のない)単位分数しか使わなかった古代エジプト人の感覚に、なんとなく共感を覚えるのでした。計算は大変だけど。

(つづく)
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古代エジプトの分数・06

 というわけで、エジプト分数には特別な記号を与えられている自然分数と、分子が1である分数しかなかったので、現代の分数のように分子と分母を示す必要がなく、分母を示す数値の上に部分を示す特別な記号 r を添えることで表していました。r の記号は凸レンズのような形をしており、これは口を開いた形なのだそうです。(参考サイト12) たとえば 1/12 は次のようにして表していました。

       

 なお、3/8 といった分子が1でない分数は、3/8=1/4+1/8 のように、単位分数の和で表していました。ただし、2/3 は下図のような特別な記号があったので、そのまま扱っていたようです。

       

 これから先、出てくる分数は、2/3 以外はすべて分子が1なので、1の部分を省略して、2分の1 → /2 と表していきます。なお、2/3=//3 とします。こうして分母のみに着目することで、エジプト分数の考え方がよりつかみやすくなるように思います。

 まず、自然分数の計算についてですが、これらは、分数の意味からすぐに理解できるいくつかの式と、その変形によって得られる式を公式のように使っていました。

   /6 + /6 = /3
   /6 + /6 + /6 = /2
   /3 + /3 = //3

 この3つについては、すぐに理解できます。さらに、

   /3 + /6 = /2 ……(1)
   /2 + /3 + /6 =1 ……(2)

という式も導かれます。

 また、(1)の両辺に /6 を加えると、 //3 = /2 + /6 …(3)

 (3)の両辺に /6 を加えて、両辺を入れかえると、
 /2 + /3 = //3 + /6 ……(4)
 これは左辺も右辺も 5/6 に相当する表現になります。

 今度は(2)の両辺に /6 を加えて、 //3 + /2 =1+ /6 ……(5)

 これらの式は、エジプトの計算家は暗記しておかねばならない公式であり、特に(3)は重要な式であったようです。

(つづく)
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